『Efficacy of Selpercatinib in RET Fusion–Positive Non–Small-Cell Lung Cancer』(NEJM 2020;383:813)より
まとめ
- RET融合遺伝子陽性非小細胞肺癌に対してプラチナ併用化学療法後のセルペルカチニブの奏効率は64%
要約
〇RET融合遺伝子は非小細胞肺癌の1-2%に認められるドライバー変異である。
〇RET融合遺伝子陽性非小細胞肺癌症例に対する選択的RET阻害薬の効果や安全性は分かっていない。
〇セルペルカチニブselpercatinibの第1-2相試験としてプラチナ併用化学療法で既治療のRET融合遺伝子陽性進行非小細胞肺癌症例と未治療の症例とに分けて登録した。
〇主要評価項目は奏功率ORRで
-プラチナ併用化学療法既治療症例 105例:64%(95%CI:54-73%)
-未治療症例 39例:85%(95%CI:70-94%)
であった。
〇副次評価項目は奏功期間、無増悪生存期間、安全性とした。
〇既治療例の奏功期間は17.5カ月(95%CI:12.0-評価不能)、フォローアップ中央値12.1カ月時点で奏功した63%の症例は継続していた。
〇未治療例の39例のうち11例で測定可能な中枢神経系病変を認めたが、頭蓋内奏効率は91%(95%CI:59-100%)であった。
〇頻度の高いグレード3以上の有害事象は
-高血圧(14%)
-ALT上昇(12%)
-AST上昇(10%)
-低ナトリウム血症(6%)
-リンパ球減少(6%)
〇全グレードだと下痢(48%)、口渇(41%)、高血圧(31%)が含まれる。
〇531例中12例(2%)で薬剤関連有害事象が原因でセルペルカチニブを中止することとなった。
キュート先生の視点
セルペルカチニブselpercatinib(LOXO-292)の第1,2相試験『LIBRETTO-001試験』の結果がNEJMに昨日掲載されましたので早速勉強しました。
昨年の日本肺癌学会学術集会で国立がん研究センター東病院の後藤先生がアンコール発表されたことが思い出されますが、昨日NEJMに掲載されました選択的RET阻害薬セルペルカチニブ(LOXO-292)の報告です。
RET融合遺伝子といえば、Lancet Resp Med誌に報告されたバンデタニブ(カプレルサ®)があります。バンデタニブは『LURET試験』でRET融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌に対して効果を示しましたが、残念ながら甲状腺髄様癌にのみ適応があり、肺癌に適応が通っていません。
今回の論文を読んで頂けると分かりますが、プラチナ化学療法既治療例でも未治療例でもその効果は圧倒的であり、しかも有害事象もコントロール可能なものばかりである印象があります。非小細胞肺癌の1-2%に認められるドライバー変異でもあり、今回のセルペルカチニブが早く承認され、患者さんに届けられることを心から望んでいます。
試験に携わった日本の先生方、お疲れ様でした。とても期待できる結果でニヤニヤしながら論文を読ませて頂きました。