キュート先生の『肺癌勉強会』

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NTRK融合遺伝子陽性の進行/転移性固形癌に対するエヌトレクチニブ(ロズリートレク®)

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『Entrectinib in patients with advanced or metastatic NTRK fusion-positive solid tumours: integrated analysis of three phase 1–2 trials』(Lancet Oncol 2020;21:271)より

まとめ

  •  NTRK陽性固形癌に対しエヌトレクチニブの奏効率は57%、奏功期間の中央値は10カ月

要約

〇エヌトレクチニブはトロポミオシンレセプターキナーゼ(TRK)A,B,Cの阻害薬で、脳血管関門の透過性があり中枢神経系にも効果があるように設計されたNTRK融合遺伝子陽性固形癌に対して抗腫瘍効果を示す。

〇3つの第1-2相試験『STARTRK-1試験』『STARTRK-2試験』『ALKA-372-001試験』からNTRK1,2,3融合遺伝子をもった転移性/局所進行固形癌に対して効果と安全性を検証した。

〇NTRK融合遺伝子陽性の固形癌で、18歳以上でPS0-2の症例、エヌトレクチニブ600mgを少なくとも1回投与された症例を登録した。

〇過去のTRK阻害薬以外の治療薬で治療された症例は許容した。

〇19の異なる組織型の固形癌で54例が登録された。

〇フォローアップの中央値は12.9カ月。

主要評価項目の奏効率は57%(54例中31例、CR 7%、PR 50%)。

奏功期間の中央値は10カ月。

〇主なグレード3/4の治療感染有害事象は体重増加と貧血だった。

〇重篤な有害事象は中神経系障害が3-4%に認められたが治療感染死亡はなかった。 

キュート先生の視点

本研究の54症例のうち、非小細胞肺癌は10例(19%)になります。一般的な各癌腫でのNTRK(エヌトラックと言ったりします)融合遺伝子陽性率は下記図(中外製薬ホームページより:https://chugai-pharm.jp/pr/npr/roz/moa/index/)になります。

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NTRK1,2,3遺伝子が遺伝子融合を起こした場合、TRK A,B,CはMAPK経路、PLCγ経路及びPI3K経路などを活性化する融合タンパクになります。TRK融合タンパクにより生存及び増殖シグナルを発し続けることで、癌細胞の過剰増殖や生存延長が起こります。このエヌトレクチニブは、TRK融合タンパクのリン酸化及びTRKシグナルの下流に位置するシグナル伝達分子のリン酸化を阻害することにより、細胞増殖抑制作用を示すとされています。

臓器横断的な治療薬であるエヌトレクチニブの奏効率は約50%ということは大変期待できるのではと考えますがまだ自分自身も使用経験がないので、まずNTRK融合遺伝子探しから始めていきます。