『GLASS: Global Lorlatinib for ALK(+) and ROS1(+) retrospective Study: real world data of 123 NSCLC patients』(Lung Cancer2020;148:48)より
まとめ
- ロルラチニブはALKあるいはROS1陽性非小細胞肺癌に対し頭蓋内病変もそれ以外の病変に対しても効果を示した。
要約
〇ロルラチニブ(ローブレナ®)はALKまたはROS1再構成に対する第3世代チロシンキナーゼ阻害薬である。
〇FDAはALK阻害薬で既治療のALK陽性非小細胞肺癌に対して承認したが、ROS1陽性肺癌に対しての承認は待機している状況。
〇8つの国から123例のALKあるいはROS1陽性非小細胞肺癌でロルラチニブが投与された症例を後ろ向きに解析した。
■ALKコホート
〇106例のALK陽性非小細胞肺癌症例は50%が男性、73%が非喫煙者、68%で脳転移を伴っていた。
〇奏効率RRは
-頭蓋外病変 60%
-頭蓋内病変 62%
〇病勢コントロール率DCRは
-頭蓋外病変 91%
-頭蓋内病変 88%
〇治療期間の中央値は23.9±1.6カ月、全生存期間の中央値は89.1±19.6カ月。
■ROS1コホート
〇17例のROS1陽性非小細胞肺癌症例は53%が男性、65%が非喫煙者、65%で脳転移を伴っていた。
〇奏効率RRは
-頭蓋外病変 62%
-頭蓋内病変 67%
〇病勢コントロール率DCRは
-頭蓋外病変 92%
-頭蓋内病変 78%
〇治療期間の中央値は18.1±2.5カ月、全生存期間の中央値は90.3±24.4カ月。
〇いずれのコホートでの治療期間も全生存期間も治療ラインや他の因子と有意な相関は認めなかった。
〇頻度の高い有害事象は全グレードで末梢性浮腫(48%)、高脂血症(47%)、体重増加(25%)、倦怠感(30%)であった。
〇認知機能障害のような中枢神経系の有害事象は18%に認めた。
キュート先生の視点
現在ロルラチニブ(ローブレナ®)はALK陽性非小細胞肺癌に対して既治療例にのみ認められております。
ロルラチニブは第2相試験でクリゾチニブで増悪したALK 陽性非小細胞肺癌に対し奏効率ORR 69.5%、無増悪生存期間の中央値が未到達であったことが示されています(Lancet Oncol 2018;19:1654)。
第1相試験ではROS1陽性非小細胞肺癌に対しても使用されており、論文化もされています。
ROS1は非扁平上皮非小細胞肺癌の1-2%に認められる稀なドライバー変異であります。
本研究においてもROS1陽性肺癌に対してのデータは少数例ではありますが、効果は十分に認められていると判断できます。ROS1肺癌に対する分子標的薬の治療選択肢が増えることは実臨床でも望まれていますので、本研究を含めて早期に承認されることを期待しています。