『First-Line Lorlatinib or Crizotinib in Advanced ALK-Positive Lung Cancer』(NEJM 202;383:2018)より
まとめ
- 未治療ALK陽性非小細胞肺がんでロルラチニブはクリゾチニブに比べ良好な無増悪生存期間と高い頭蓋内病変への効果を示した。
要約
〇ALKに対する第3世代阻害剤であるロルラチニブは既治療ALK陽性非小細胞肺がんに抗腫瘍活性を示す。
〇進行ALK陽性非小細胞肺がんの1次治療としてクリゾチニブと比較しロルラチニブの効果は分かっていない。
〇未治療で転移性進行ALK陽性非小細胞肺がん296人を対象に、ロルラチニブとクリゾチニブを比較するグローバルランダム化第3相試験を実施した。
〇主要評価項目は盲検化し独立した中央評価委員会評価での無増悪生存期間。
〇副次評価項目には奏効率と頭蓋内病変の奏効率が含まれた。
〇177例中133例(75%)の予想された病勢進行または死亡のイベントが発生した後、有効性の中間分析が計画された。
〇無増悪生存期間は
-ロルラチニブ群 未到達(95%CI:未到達-未到達)
-クリゾチニブ群 9.3カ月(95%CI:7.6-11.1カ月)
であり、12ヶ月時点で病勢進行なしに生存していた症例の割合は
-ロルラチニブ群 78%(95%CI:70-84)
-クリゾチニブ群 39%(95%CI:30-48)
だった(病勢進行/死亡のハザード比 0.28、95%CI:0.19-0.41、p<0.001)。
〇奏効率は
-ロルラチニブ群 76%(95%CI:68-83)
-クリゾチニブ群 58%(95%CI:49-66)
で、測定可能な脳転移を有する症例はロルラチニブ群に26%、クリゾチニブ群に27%含まれており、そのうち
-ロルラチニブ群 82%(95%CI:57-96)
-クリゾチニブ群 23%(95%CI、5-54)
において頭蓋内での奏功を示した。
〇ロルラチニブが投与された頭蓋内病変のある17例のうち12例(71%)が頭蓋内で完全奏功を認めた。
〇ロルラチニブの一般的な有害事象は高脂血症、浮腫、体重増加、末梢神経障害、認知機能への影響だった。
〇ロルラチニブはクリゾチニブよりもグレード3/4の有害事象(主に脂質レベルの変化)と関連していた(72% vs 56%)。
〇有害事象による治療の中止はロルラチニブ群で7%、クリゾチニブ群で9%に起こった。
キュート先生の視点
Alice T Shaw先生からのNEJM『CROWN試験』の報告で、昨日アップされました。
ALK陽性肺がんの臨床試験では、フロンティアであったはずのクリゾチニブがボコボコにされている印象がありますが、本試験でも圧倒的なPFS、Cranial progressionの差を見せつけてくれています。感動・・・。
特に論文中の頭蓋内病変の奏功に関しては、ロルラチニブ群でほぼ100%(増悪なし)で2年半プラトーになっていて感動・・・(2回目)。
先日、改訂されました『肺癌診療ガイドライン2020年度版』でのALK陽性非小細胞肺がんの1次治療ではアレクチニブ(推奨度 1A)、クリゾチニブ(推奨度 2A)、セリチニブ(推奨度 2B)となっており、ロルラチニブは2次治療以降での推奨となっています。
改訂されてまだ1週間・・・ではありますが、本試験の結果をもってどうなるかが注目されます。