キュート先生の『肺癌勉強会』

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EGFR陽性非小細胞肺癌に対するオシメルチニブ+ベバシズマブ

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『Effect of Osimertinib and Bevacizumab on Progression-Free Survival for Patients With Metastatic EGFR-Mutant Lung Cancers A Phase 1/2 Single-Group Open-Label Trial』(JAMA Oncol. doi:10.1001/jamaoncol.2020.1260 Published online May 28, 2020)

まとめ

  • 49例の転移性EGFR陽性肺がん症例にオシメルチニブ+ベバシズマブを投与
  • 主要な目的は第2相試験で何例に薬剤を投与し、12カ月時での無増悪生存を調べること
  • 12カ月時の無増悪生存PFS率:76%
  • 奏効率ORR:80%
  • 無増悪生存期間PFSの中央値:19カ月

要約

〇EGFR陽性非小細胞肺癌に対してエルロチニブ+ベバシズマブがエルロチニブ単剤に比較して無増悪生存期間を延長させたことは示されている。

〇1次治療でオシメルチニブとベバシズマブの併用療法の第1,2相試験。

〇49例の転移性EGFR陽性肺がん症例にオシメルチニブ+ベバシズマブを投与

〇本研究の主要な目的は第2相試験で何例に薬剤を投与し、12カ月時での無増悪生存を調べること

〇副次評価項目としては奏効率ORR、無増悪生存期間PFS、全生存期間OS、安全性。

〇12カ月時の無増悪生存PFS率:76%

〇奏効率ORR:80%

〇無増悪生存期間PFSの中央値:19カ月

〇6例で中枢神経系病変を認めたが、全例で完全奏功あるいは部分奏功。

〇治療開始6週間の時点で、EGFR遺伝子変異のcirculating tumor(ct)DNAが検出されることは短いPFSと関連(16.2カ月 vs 9.8カ月、p=0.04)。

〇本研究での耐性メカニズムとして扁平上皮癌への転化、多型癌への転化、L718Q変異、C797S変異の獲得が確認された。

キュート先生の視点

本論文のイントロにも書かれているが、EGFR陽性非小細胞肺癌に対するEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)は劇的な効果を示す。特に第3世代EGFR-TKIであるオシメルチニブ(タグリッソ®)は第1世代EGFR-TKIであるゲフィチニブ(イレッサ®)やエルロチニブ(タルセバ®)と比較してPFS、OSで勝っていることが『FLAURA試験』(NEJM 2018;378:113)で示されている。

またプラチナ併用化学療法+EGFR-TKI治療に関してもEGFR-TKI単独で治療するよりも高い効果が示されている。

本研究のようなEGFR-TKIと血管新生阻害薬の併用療法に関して思いだされるのは、

 -エルロチニブ+ベバシズマブの『NEJ026試験』(Lancet Oncol 2019;20:625)

 -エルロチニブ+ラムシルマブの『RELAY試験』(Lancet Oncol 2019;20:1655)

だろう。いずれの試験でもエルロチニブ単剤よりも良好な無増悪生存期間PFSが得られており大変重要な試験の結果であったと考える。

今回、第3世代EGFR-TKIであるオシメルチニブと血管新生阻害薬のベバシズマブの併用療法であるが、いずれの薬剤も脳血管関門BBBを通過し中枢神経系病変に効果を示すこと分かっており、特に約半数で中枢神経系の増悪をきたすEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌症例にとって大変期待される試験である。またオシメルチニブは中枢神経系の増悪第1世代EGFR-TKIよりもきたしにくい薬剤であり、今回の6例の中枢神経系の病変を併発した症例に改善が見られたことは、症例としては少ないが大変朗報である。今後発表されるであろう第3相試験の結果が待ち遠しい。