『KRAS G12C Inhibition with Sotorasib in Advanced Solid Tumors』(NEJM 2020;383:1207)より
まとめ
- KRAS G12C変異を標的としたソトラシブはグレード3/4の有害事象を11.6%が報告されたが、肺がんで32.2%、大腸がんで7.1%の奏効率を認めた。
要約
〇KRAS変異を標的とするがん治療薬で承認されているものは現時点で存在しない。
〇KRAS pG12C変異は非小細胞肺がんの13%、大腸がんやその他のがん種の1-3%に認められる。
〇ソトラシブはKRAS G12C変異を選択的、不可逆的に標的とする分子標的薬である。
〇KRAS pG12C変異をもつ進行固形がん症例に対してソトラシブの第1相試験を行い、ソトラシブを1日1回内服させた。
〇主要評価項目は安全性、副次評価項目は薬物動態とRECIST v1.1で評価した奏効率とした。
〇全129例(非小細胞肺がん 59例、大腸がん 42例、その他 28例)を用量漸増コホートと拡大コホートに登録した。
〇転移性のがんに対する前治療のレジメン回数の中央値は3であった。
〇用量による毒性や治療関連死は認められなかった。
〇56.6%に治療関連有害事象を認め、11.6%はグレード3/4であった。
〇非小細胞肺がんで
-奏効率 32.2%
-病勢コントロール率 88.1%
-無増悪生存期間の中央値 6.3カ月(0.0-14.9カ月)
であった。
〇大腸がんで
-奏効率 7.1%
-病勢コントロール率 73.8%
-無増悪生存期間の中央値 4.0カ月(0.0-11.1カ月)
であった。
〇膵がん、子宮内膜がん、虫垂がん、悪性黒色腫の症例でも奏功を認めた。
キュート先生の視点
先日開催された『肺癌学会2020』でもインターナショナルシンポジウムでKRAS変異について台湾大学のジェームスヤン先生が講演されていましたので、改めて勉強しました。
非小細胞肺がんの13%に認められるKRAS G12C変異は今まで全く治療薬のない種類のがんであり、なくなく殺細胞性抗癌剤を繰り返し行っている状況でした。
この数年で免疫治療が登場したことにより、少しだけ戦えるようになってきましたが、EGFRやALKのような画期的な分子標的薬のある症例と異なり、免疫治療の効果が薄い症例には厳しい経過を辿らざるを得ない状況でした。
今回の『CodeBreak100試験』は第1相試験ですが、今後第2相、3相試験が行われ、早くに実臨床で治療に活かされることを望んでいます。KRAS変異症例は数多くいらっしゃるはずですので・・・。