キュート先生の『肺癌勉強会』

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進行NSCLCへのニボイピ併用のプール解析(Medical Tribune連載より)

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医療情報サイト「メディカルトリビューン」さんの連載「みんなで肺がん注目論文 徹底検証しちゃいました」の紹介です。この企画は肺がん診療に重要な論文を、第一線で活躍される先生方とわたくしキュート先生で徹底的に検証しよう、という内容になっています。

 

連載第11回目は近畿中央呼吸器センター呼吸器腫瘍内科医長の田宮 朗裕 先生に解説を頂きました。

進行NSCLCへのニボイピ併用のプール解析

Long-term survival with first-line nivolumab plus ipilimumab in patients with advanced non-small cell lung cancer: a pooled analysis(Ann Oncol 2022;S0923-7534(22)04740-8.)

進行非小細胞肺がんの一次治療における

抗PD-1抗体ニボルマブ+抗CTLA-4抗体イピリムマブ併用療法は、

化学療法単独に比べて予後を改善することは報告されている。

今回さらに大規模集団で検証すべく、4つの試験データの

プール解析を実施。

計1,332例でのニボルマブ+イピリムマブの効果が検証された。

 

プール集団におけるニボイピ療法によるOS中央値は18.6カ月。

 

PD-L1の発現別に見た解析では、

PD-L1発現レベルが1%未満、1%以上、1~49%、50%以上で

OS中央値はそれぞれ15.4カ月、20.2カ月、17.1カ月、26.0カ月。

 

6カ月時点での奏効の状況が、OSに関連するということは今回示された重要なポイントです。過去にも免疫治療において同様の報告がありますが、初回免疫治療後6カ月での奏効が長期生存と関連していることがニボイピでも同様の結果が示されました。

 

実臨床ではイピリムマブの有害事象や抗PD-1抗体よりも使い慣れないことなどから、やや忌避的な印象です。ただ進行NSCLCの初回治療としては重要な位置付けですし、活用しない手はありません。PD-L1の発現率や組織型、年齢や各種患者背景を念頭に置いた治療戦略とともに、6カ月時点での奏効状態なども参考に今後考えていきたいところです。


ぜひ田宮先生の適格なコメントと徹底検証を
多くの肺癌診療に携わる医療者に読んで頂きたいと思っています。

【IMpower010 日本人】NSCLC術後補助療法としてのアテゾ 日本人サブ解析は?(Medical Tribune連載より)

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医療情報サイト「メディカルトリビューン」さんの連載「みんなで肺がん注目論文 徹底検証しちゃいました」の紹介です。この企画は肺がん診療に重要な論文を、第一線で活躍される先生方とわたくしキュート先生で徹底的に検証しよう、という内容になっています。

 

連載第10回目は論文の筆頭著者で静岡県立静岡がんセンター呼吸器内科医長の釼持 広知 先生に解説を頂きました。

NSCLC術後補助療法としてのアテゾ 日本人サブ解析は?

Adjuvant atezolizumab in Japanese patients with resected stage IB-IIIA non-small cell lung cancer (IMpower010)(Cancer Sci 2022;113:4327)

『IMpower010試験』は

ⅠB~ⅢA期の完全切除後の非小細胞肺がんNSCLCで

術後化学療法を施行した症例群を対象とし、

術後補助療法のアテゾリズマブの有効性と安全性を検証した

国際第Ⅲ相ランダム化比較試験。

 

1,280例がシスプラチン併用術後化学療法を1~4サイクル投与後、

術後補助療法としてアテゾリズマブ1,200mgを21日間隔で

最長16サイクルまたは1年投与するアテゾリズマブ群(507例)

またはBSC群(498例)に割り付けられた。

 

日本人患者は国内24施設で149例が登録され、

ITT集団は117例(アテゾリズマブ群59例、BSC群58例)

Ⅱ~ⅢA期のランダム化された全患者集団は113例

PD-L1発現を認めたⅡ~ⅢA期集団は74例(同41例、33例)。

 

DFS中央値は、PD-L1 TC 1%以上のⅡ~ⅢA期集団において、

BSC群の31.4カ月、アテゾリズマブ群では未到達と改善傾向が示された。

 

日本人は149例が含まれており、PD-L1陽性のⅡ~ⅢA期集団でのDFS、Ⅱ~ⅢA期の全集団でのDFS、ITT集団でのDFSが順に評価されました。症例数は限られておりますので、日本人データのみで有意差を示すことはできませんでしたが、いずれの集団においてもDFSは改善傾向にあることは論文から読み取れます。

 

実臨床の現場を想像してみた時に注意すべきは、完全切除(R0切除)と考えられるⅠB~ⅢA期の症例に対して3週間ごと16サイクルの約1年間、抗PD-L1抗体であるアテゾリズマブを投与し続ける必要があることです。EGFR変異陽性NSCLCの術後アジュバント治療としてのオシメルチニブの効果を検証した「ADAURA試験」でも同様のことが指摘されていますが、評価病変がなく時としてアジュバント治療が不要かもしれない症例に対しても、副作用や免疫関連有害事象に細心の注意を払いながらフォローする必要があります。

 

「CheckMate-816試験」のような、手術前の免疫治療も今後選択肢の1つになりうる可能性もあり、今後、周術期の治療選択肢が幅広くなることは間違いありません。いずれにせよ、内科医と外科医が密に連携を取って周術期管理を行う仕組みづくりが今後はさらに重要な課題と考えます。

 

ぜひ剱持先生の実臨床に沿った適格なコメントと徹底検証を
多くの肺癌診療に携わる医療者に読んで頂きたいと思っています。


【NEJ009】EGFR-TKI+αの治療戦略(Medical Tribune連載より)

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連載第9回目は論文の筆頭著者で東北大学病院呼吸器内科病院講師の宮内 栄作 先生に解説を頂きました。

EGFR-TKI+化学療法の効果は?

Updated Analysis of NEJ009: Gefitinib-Alone Versus Gefitinib Plus Chemotherapy for Non-Small-Cell Lung Cancer With Mutated EGFR(J Clin Oncol 2022;40:3587)

日本で実施された第Ⅲ相試験である「NEJ009試験」では、

EGFR変異陽性の未治療にし小細胞肺がんを対象に、

ゲフィチニブ+化学療法併用療法の有効性が検証された。

 

症例群は

 ①非扁平上皮非小細胞肺がん

 ②未治療

 ③ⅢB/Ⅳ期または術後再発

 ④20~75歳

 ⑤PS 0~1

 ⑥EGFR遺伝子変異陽性

などの条件を満たした患者345例が登録された。

 

ゲフィチニブ単独群173例と

ゲフィチニブ+化学療法群172例に割り付けられた。

 

追加解析の対象となった341例における

補正後のPFS2中央値は、

 ゲフィチニブ単独群 18.0カ月

 ゲフィチニブ+化学療法群 20.9カ月

と有意な延長を示した。

 

結果はPFS1、PFS2の延長は確認できましたが、OSでの差は示せませんでした。試験の途中でオシメルチニブが承認されたことの影響されているのでは、と考えられます。

近年、進行肺がんの臨床試験のアウトカムとしてOSは最も重要な評価項目とされていますが、医療の進歩や時代背景などの時間軸が重なることで数年にも及ぶOSで評価することは容易でなくなってきています。

EGFR-TKIは内服治療であり、有害事象さえコントロールできれば外来で継続することが容易な治療レジメンでもあります。肺がん診療においては、プラチナ併用化学療法も重要なレジメンであり、併用するメリットは少なからずあるものと考えられます。この「NEJ009」レジメン、一度は試してみたい治療と思っています。

 

ぜひ宮内先生の鋭い視点と徹底検証を
多くの肺癌診療に携わる医療者に読んで頂きたいと思っています。

【CheckMate816】術前ニボルマブ+化学療法が著効(Medical Tribune連載より)

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医療情報サイト「メディカルトリビューン」さんの連載「みんなで肺がん注目論文 徹底検証しちゃいました」の紹介です。この企画は肺がん診療に重要な論文を、第一線で活躍される先生方とわたくしキュート先生で徹底的に検証しよう、という内容になっています。

 

連載第8回目は論文の共同著者で神奈川県立がんセンター呼吸器外科部長の伊藤 宏之 先生に解説を頂きました。

術前ニボルマブ+化学療法が著効

Neoadjuvant Nivolumab plus Chemotherapy in Resectable Lung Cancer(NEJM 2022;386:1973)

切除可能な非小細胞肺がんの術前療法として、

ニボルマブ+化学療法の有効性および安全性を

評価した『CheckMate816試験』

 

本研究の対象は、

 ①ⅠB(腫瘍径4cm以上)~ⅢA期の切除可能NSCLCと診断

 ②がん治療としての前治療歴がない

 ③全身状態(ECOG PS)が0~1

 ④EGFR変異・ALK融合遺伝子が認められていない

などの条件を満たした症例群。

 

358例を術前療法としての

プラチナ併用化学療法+ニボルマブ360mgを併用する

ニボルマブ併用群(179例)と

化学療法単独群(179例)に1:1でランダムに割り付けた。

治療後6週以内に切除術を施行した。

 

無イベント生存期間EFS中央値は

 化学療法単独群 20.8カ月

 ニボルマブ併用群 31.6カ月

と有意な延長を認めた。

 

病理学的完全奏功pCRは

 化学療法単独群 2.2%(4/179例)

 ニボルマブ併用群 24.0%(43/179例)

と21.6%ポイントの差が示された。

 

切除可能非小細胞肺がんに対して術前化学療法にニボルマブを上乗せする治療、通称「術前ニボケモ」の効果を検証した試験の紹介です。

結果は主要評価項目である無イベント生存期間EFSを有意に延長し、病理学的完全奏効pCRも有意に改善しました。科学的な表現ではありませんが、圧倒的な差です。

免疫治療では免疫関連有害事象という特殊な副作用に注意が必要ですが、今回は3サイクルという短い期間でのニボルマブですので汎用性が高い治療法と捉えることができます。現に同試験でも有害事象のプロファイルは化学療法単独群と大きな差を認めていません。

 

今年2023年は肺がんの周術期治療が重要視されています。

ぜひ呼吸器外科の伊藤先生との徹底検証を

多くの肺癌診療に携わる医療者に読んで頂きたいと思っています。

【J-SONIC】IPF合併NSCLCに対するニンテダニブ上乗せ効果は?(Medical Tribune連載より)

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連載第7回目は論文の共同著者で神奈川県立循環器呼吸器病センター呼吸器内科医長の池田 慧 先生に解説を頂きました。

IPF合併NSCLCに対するニンテダニブ上乗せ効果は?

Nintedanib plus chemotherapy for non-small cell lung cancer with IPF: a randomized phase 3 trial(Eur Respir J 2022;60:2200380)

特発性肺線維症IPFを合併する非小細胞肺がん症例で、

①20歳以上

②病期がⅢ~Ⅳ期または術後再発例

③全身状態(ECOG PS)が0~1

④化学療法が未施行

などの適格条件を満たした243例が対象。

化学療法+ニンテダニブ群(121例)と

化学療法単独群(122例)にランダムに割り付けられた。

 

化学療法は3週を1サイクルで

カルボプラチン(AUC 6、day 1)

+nab-パクリタキセル(100mg/m2、day1、8、15)

を4サイクル施行。

ニンテダニブは150mgを1日2回、連日投与し

化学療法4サイクル終了後もニンテダニブ単剤投与は継続。

 

無イベント生存期間EFSの中央値は、

 化学療法単独群の11.8カ月

 化学療法+ニンテダニブ群は14.6カ月

と両群に有意差は認められなかった。

 

奏効率(ORR)は、

 化学療法単独群の56.0%

 化学療法+ニンテダニブ群では69.0%

と有意に効果が高かった(P=0.040)。

 

無増悪生存期間PFS中央値は、

 化学療法単独群の5.5カ月

 化学療法+ニンテダニブ群は6.2カ月

と有意な延長を認めた(HR 0.68)。

 

注目すべきはORR、PFSいずれにおいてもニンテダニブを上乗せする群で有意差を付けて高い効果を示しており、効果の面では十分期待できる点です。

OSでは後治療の影響も受けてしまい全症例群では差を付けることができませんでしたが、非扁平上皮がんに限ればOSにおいても有意差を付けているため、症例を選べばよりニンテダニブの恩恵を受けられそうな結果が示されました。

後治療としてS-1が約40~50%で選択されておりますが、間質性肺炎のリスクが比較的高い免疫治療やドセタキセル、ペメトレキセドなども選択されていることが分かったこともこの研究の重要なことです。

 

間質性肺炎合併肺癌の治療は現在の肺癌診療においても重要な課題です。

ぜひ池田先生との徹底検証を

多くの肺癌診療に携わる医療者に読んで頂きたいと思っています