最新の『肺癌診療ガイドライン 2020年版』発刊
1月18日に『肺癌診療ガイドライン 2020年版』が発刊されました。
今までにも何回か紹介しましたが、注目の改訂ポイントは
■新しいドライバー変異に「MET」が追加
■「ニボルマブ+イピリムマブ併用療法」の「IOIO」が追加
■ALK変異陽性肺がんの2次治療に「ブリガチニブ」
■ROS-1変異陽性肺がんの治療に「エヌトレクチニブ」
の4つが挙げられます。
手に届き次第、熟読して臨床に活かしていきます。
1月18日に『肺癌診療ガイドライン 2020年版』が発刊されました。
今までにも何回か紹介しましたが、注目の改訂ポイントは
■新しいドライバー変異に「MET」が追加
■「ニボルマブ+イピリムマブ併用療法」の「IOIO」が追加
■ALK変異陽性肺がんの2次治療に「ブリガチニブ」
■ROS-1変異陽性肺がんの治療に「エヌトレクチニブ」
の4つが挙げられます。
手に届き次第、熟読して臨床に活かしていきます。
〇『IMpower133試験』は進展型小細胞肺がんに対し、カルボプラチン+エトポシド療法にアテゾリズマブの追加効果を見た無作為化二重盲検第I/III相試験で、全生存と無増悪生存の有意な改善を認めた。
〇更新された全生存や増悪パターン、安全性や探索的バイオマーカーとしてPD-L1や血液ベースのTMBについて報告する。
〇アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド群に201例、プラセボ+カルボプラチン+エトポシド群に202例登録された。
〇フォローアップ期間の中央値は22.9カ月で302例の死亡イベントを認めた。
〇全生存期間の中央値は
-アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド群 12.3カ月
-プラセボ+カルボプラチン+エトポシド群 10.3カ月
であり、ハザード比 0.76、95%CI:0.60-0.95、p=0.0154だった。
〇18カ月時点でそれぞれ34.0%、21.0%が生存していた。
〇PD-L1発現率、TMBの状態に関わらずアテゾリズマブの追加効果を認めた。
進展型小細胞肺がんの1次治療としても今までのプラチナ併用化学療法に免疫治療を追加する複合免疫療法が実際に行われています。
併用する免疫療法としては抗PD-L1抗体のアテゾリズマブとデュルバルマブがあります。データではぺムブロリズマブを追加した『KEYNOTE604試験』という結果もあります
プラチナ製剤としてシスプラチンも使用可能なのがデュルバルマブであるとか、生存曲線のカタチがどちらがイイとか、様々な意見が昨年も飛び交っておりましたが・・・結局のところ決め手に欠けるような印象を持っています。
小細胞肺がんですので抗がん剤を上手に使いきることが大事かと個人的には思っっています。
またどこかで「小細胞肺がん治療まとめ」も勉強していきます。
〇現在、非扁平上皮非小細胞肺がんにおいては、『KEYNOTE189試験』の結果からプラチナ+ペメトレキセド+ぺムブロリズマブによる複合免疫療法からの維持療法が行われているが、歴史的には『PARAMOUNT試験』『PRONOUNCE試験』『JVBL試験』を参照している。
〇『KEYNOTE189試験』において5サイクル以上ペメトレキセドを投与した
-プラチナ+ペメトレキセド+ぺムブロリズマブ 310例
-プラチナ+ペメトレキセド+プラセボ 135例
を『PARAMOUNT試験』の359例、『PRONOUNCE試験』の98例、『JVBL試験』の29例のプールデータで5サイクル以上ペメトレキセドを投与した計486例を比較した。
〇『KEYNOTE189試験』で5サイクル以上ペメトレキセドと投与された群において、無増悪生存期間は
-プラチナ+ペメトレキセド+ぺムブロリズマブ群 9.3カ月
-プラチナ+ペメトレキセド+プラセボ群 6.6カ月
でHR 0.53、95%CI:0.42-0.68、p<0.0001とぺムブロリズマブを追加した群が有意に延長した。
〇5サイクル以上ペメトレキセドを投与したプール症例群では無増悪生存期間は5.6カ月だった。
〇奏効率は『KEYNOTE189試験』から
-プラチナ+ペメトレキセド+ぺムブロリズマブ群 58.7%
-プラチナ+ペメトレキセド+プラセボ群 28.9%
プール症例群では42.4%だった。
〇グレード3以上の治療関連有害事象は『KEYNOTE189試験』もプールデータも同様であった。
UCLAのGaron先生からの報告です。『PARAMOUNT試験』の結果からペメトレキセド維持療法がガイドラインに掲載された時は画期的!と思っていましたが、今の『KEYNOTE189試験』はそれを上回る恩恵を受けているわけです。
もちろん免疫治療は治療開始前に間質性肺炎や自己免疫疾患の有無をよく検討するわけですが、それさえクリアできればプラチナ併用+免疫療法が標準治療を考えるべきだと思っています。
スタンフォード大学で免疫学の研究を行う新妻耕太先生と奥様のLucy先生が、ゼロから「免疫」や「ウイルス」について学べるよう出版された本を隅々まで丁寧に読ませて頂きました。
読み終わった感想を一言で言わせて頂きますと、著者の新妻先生の
優しさ
を感じることができる本です。
今まさに日本でも全世界でも人類とウイルスが戦っている最中です。
日々、ウイルスのこと、免疫のこと、ワクチンのこと・・・
多くの話題が目まぐるしく飛び交っていますが、
医師として最前線の現場に立つわたくしでも難しい内容が多く、
残念ながら全ての内容は理解できていません。
特に「免疫学」は医学の発展も著しく、
わたくしが医学生として勉強した20年以上前を思い起こしますと、
苦い思い出しかありません。
免疫学の重鎮 子安重夫先生の穏やかだけど超・難解な講義を聴き、
子安先生の著書『免疫学はやっぱりおもしろい』を10回くらい通読して、
何とか試験を合格点ギリギリで通すのがやっと、
だった記憶しかありません。
医者になってからも時々免疫の勉強をし直す機会はありましたが、
年々新しいことが分かるので、
着いていくのが大変で理解するのが難しい分野であることは間違いないです。
それが免疫学です。
本書の1番の特徴は、読者の知識レベルによって
-講義パート
-解説パート
-コラムパート
に分けられており誰でもとっつき易いように構成されていることです。
「講義」で内容の概要を思い描き、
「解説」で深く踏み込んでいき、
さらに関連する「コラム」で発展的な知識を得ることができます。
内容もウイルスや免疫を理解するための
-生物学の基礎
-感染拡大の仕組み
-免疫学の基礎
-様々な検査方法
が順々に解説されており、
読者が理解することを一番に考えられた流れになっています。
ココに新妻先生の「優しさ」を感じるコトができます。
また理解がより深まるように最近よくお見掛けする「いらすとや」さんと
12歳のイラストレーター「コヤマノゾミ」さんのかわいいイラストも
本書の中にふんだんに使われており、
免疫学を始めて勉強する人にとっても頭にイメージしやすくなっています。
免疫学やウイルス学について系統立って勉強したのはしばらくぶりですが、
基礎中の基礎の知識から理解することができました。
20年以上前の医学生だった頃や、10年ほど前の大学での研究期間に、
この本や新妻先生に出会っていたら今もう少し自分も違っていたのでは、
と思える免疫学・ウイルス学の教科書です。
免疫・ウイルス・ワクチンについて基本的かつ正しい知識を得ることで、
今後のコロナとの長い戦いにおいても、
厳しいウィズコロナ時代を生きていく上でも、
多くの人にとって本書が大きな支えになるものと考えます。
ぜひ多くの医療従事者にも読んで欲しい本書ではありますが、
この現状で免疫やウイルスに興味がある非医療者でも
じっくり読んでみたい1冊
として紹介させて頂きました。
一度、新妻先生夫妻の優しさに触れてみてはいかがでしょうか。
〇EGFR陽性非小細胞肺がんに対して第1世代EGFR-TKIと血管新生阻害薬の併用はその効果が期待されているが、最近の単アーム試験からはオシメルチニブ+血管新生阻害薬は相乗的に作用しないのではと懸念されている。
〇EGFR T790M変異を持つ肺腺癌症例に対して、オシメルチニブ単剤治療と比較してオシメルチニブ+ベバシズマブの効果と安全性を調べることを目的とした。
〇先行するEGFR-TKIで治療後に病勢進行した進行非小細胞肺がんの症例で、T790M耐性変異を獲得した症例を登録した。
〇本研究は6症例でリードインパートと第2相試験パートとなっている。
〇第2相試験では症例は1:1の割合でオシメルチニブ+ベバシズマブ併用群かオシメルチニブ群にランダムに振り分けられた。
〇オシメルチニブ 80mg/日とベバシズマブは3週毎に15mg/kgで投与された。
〇主要評価項目は調査者評価の無増悪生存期間PFSとし、副次評価項目は奏効率、治療成功期間TTF、全生存、安全性とした。
〇87例が登録され、6例がリードインパート、81例が第2相に組み込まれた。
〇年齢の中央値は68歳(41-82歳)、33例(41%)が男性、37例(46%)がECOG-PS 0、21例(26%)が脳転移を伴っていた。
〇奏効率は
-オシメルチニブ+ベバシズマブ群 68%
-オシメルチニブ単剤群 54%
と併用群が良好であったが、無増悪生存期間PFSは
-オシメルチニブ+ベバシズマブ群 9.4カ月
-オシメルチニブ単剤群 13.5カ月
でHR 1.44、80%CI:1.00-2.08、p=0.20と併用群の期間が延長しなかった。
〇治療成功期間TTFも併用療法群が短かった(8.4カ月 vs 11.2カ月、p=0.12)。
〇全生存期間OSも差を認めなかった(未到達 vs 22.1カ月、p=0.96)。
〇併用群の主要なグレード3以上の有害事象は蛋白尿 23%、高血圧 20%だった。
またよく考えてコメントしたいと考えていますが、先日の第1/2相試験ではオシメルチニブとベバシズマブの併用での1年無増悪生存率が76%であったとの報告でした。
第1世代EGFR-TKIに対する血管新生阻害薬の上乗せ効果は目に見える結果でしたが、オシメルチニブは単剤でも効果が十分に認められることからベバシズマブの上乗せ効果が乏しくなってしまうのかな・・・と個人的に考えております。ただ血管新生阻害薬が活かせるような、脳浮腫の強い症例や胸水が貯留している症例に対する症例毎の適応はあるのかなとも思っています。
赤松先生、ご報告ありがとうございました。
▼筆頭著者である赤松先生が編集に関わっている『肺癌診療 虎の巻』です▼