キュート先生の『肺癌勉強会』

肺癌に関連するニュースや研究結果、日常臨床の実際などわかりやすく紹介

【KEYNOTE024 5年フォロー】PD-L1発現率50%以上の非小細胞肺がんに対するぺムブロリズマブの5年生存率 31.9%!

肺癌, 肺癌勉強会, KEYNOTE024, Pembrolizumab, キイトルーダ, ペムブロリズマブ

『Five-Year Outcomes With Pembrolizumab Versus Chemotherapy for Metastatic Non–Small-Cell Lung Cancer With PD-L1 Tumor Proportion Score≧50%』(JCO 2021, published at April 19)より

まとめ

  •  PD-L1 TPS 50%以上の非小細胞肺がんでぺムブロリズマブの5年生存率 31.9%。

要約

〇『KEYNOTE024試験』はオープンラベル、無作為化第III相試験であり、PD-L1発現率50%以上の未治療非小細胞肺がんに対するぺムブロリズマブとプラチナ併用化学療法を比較した。

〇今回5年フォローアップデータを報告する。

〇過去の解析でぺムブロリズマブは無増悪生存期間と全生存期間を有意に改善したことを示した。

〇症例は無作為に1:1にぺムブロリズマブ群とプラチナ併用化学療法群に振り分けられ、化学療法群は病勢増悪後にぺムブロリズマブにクロスオーバーが認められた。

〇主要評価項目は無増悪生存期間とし、無増悪生存期間は副次評価項目とされた。

〇305例が無作為化され、154例がぺムブロリズマブ群、151例が化学療法群に振り分けられた。

〇無作為化から2020年6月のカットオフ時までの時間の中央値は59.9カ月。

〇化学療法で最初に治療された症例のうち、99例が後治療として抗PD-1抗体/抗PD-L1抗体治療を受け、66.0%のクロスオーバー率だった。

全生存期間の中央値は

 -ぺムブロリズマブ群 26.3カ月(95%CI:18.3-40.4カ月)

 -化学療法群 13.4カ月(95%CI:9.4-18.3カ月)

で有意にぺムブロリズマブ群が延長した(HR 0.62、95%CI:0.48-0.81)

5年次の全生存率は

 -ぺムブロリズマブ群 31.9%

 -化学療法群16.3%

だった。

〇39例は約2年間、35サイクルのぺムブロリズマブを投与されており、そのうち82.1%は約5年のデータカットオフ時に生存していた。

キュート先生の視点

進行肺がんでも5年で約1/3の症例が生存、というデータが示されました。もちろんPD-L1発現率 50%以上の方限定になりますが、驚異的なデータと考えざるを得ません。しかも分子標的薬のデータではなく、免疫治療で…というところに医学の進歩を感じてなりません。

進行肺がんと言えば、約1年の生存と教えられた15年以上前の研修医時代とはだいぶ違います。

現在実臨床では、1次治療に化学療法と免疫療法を同時に行う「ケモコンボ」や免疫治療同士を組み合わせる「IO-IO」が行われていますが、やはりPD-L1 TPS 50%以上の症例に関してはぺムブロリズマブ単剤が良いのでは、と個人的には思ってしまいます。PFSのカプランマイヤーでは約半年までの間に約4割の方が増悪してしまいますが、それは化学療法でも同じこと。2次治療までの無増悪生存を見た「PFS2」のカプランマイヤーをみると、最初から化学療法群と差がついてきておりますし、3年でも39.5%、5年でも26.3%の症例が2次治療までで病勢増悪なく経過しているという力強いデータがあります。

ケモコンボもIO-IOも100%奏功するわけではありません。それはもちろんこのぺムブロリズマブも同じことですが、2次治療以降にも効果が期待できる治療法が残っているということ、2次治療までの効果が期待できることは患者さんにとっては喜ばしいことではないでしょうか。

肺がん診療を行っている先生方がどのように解釈されるかは様々と思いますので、多くの方のご意見をお伺いしたいと考えています。

ロルラチニブは第2世代ALK-TKIで治療されたALK陽性非小細胞肺がんにおいても高い抗腫瘍効果

肺癌, 肺癌勉強会, ALK, ロルラチニブ, クリゾチニブ, ローブレナ

『Intracranial and extracranial efficacy of lorlatinib in patients with ALK-positive non-small-cell lung cancer previously treated with second-generation ALK TKIs』(Ann Oncol 2021;32:620)より

まとめ

  • ロルラチニブは第2世代ALK-TKIで治療されたALK陽性非小細胞肺がんにおいても高い頭蓋内/頭蓋外抗腫瘍効果を持つ

要約

〇ロルラチニブはALK陽性非小細胞肺がんに対して効果を示す第3世代ALKチロシンキナーゼ阻害薬(ALK-TKI)である。

〇本研究は第2世代ALK-TKIで病勢増悪したALK陽性非小細胞肺がん症例に対して、頭蓋内/それ以外の病変に対するロルラチニブの効果を見た。

〇1レジメン以上の第2世代ALK-TKI±化学療法で治療された進行非小細胞肺がんの症例が登録された。

〇全症例において頭蓋内/それ以外の病変での抗腫瘍効果が評価された。

〇第2世代ALK-TKIで治療された139例は、

 -EXP3Bコホート:1種類の先行するALK-TKIで治療 28例

 -EXP4コホート:2種類の先行するALK-TKIで治療 65例

 -EXP5コホート:3種類の先行するALK-TKIで治療 46例

という内訳になっている。

〇このEXP3B-5コホートにおいて、

 -奏効率ORR 39.6%

 -頭蓋内奏効率IC-ORR 56.1%

 -頭蓋外奏効率EC-ORR 36.7%

 -奏功期間の中央値DOR 9.6カ月

 -無増悪生存期間の中央値 6.6カ月

 -全生存期間の中央値 20.7カ月

であった。

〇EXP3Bコホートにおいて、

 -ORR 42.9%

 -IC-ORR 66.7%

 -EC-ORR 32.1%

〇EXP4/5コホートにおいて、

 -ORR 38.7%

 -IC-ORR 54.2%

 -EC-ORR37.8%

であった。

キュート先生の視点

現時点での『肺癌診療ガイドライン』において、ロルラチニブはALK-TKIで病勢増悪後に「ロルラチニブを提案する」とされています(Lancet Oncol 2018;19:1654)。

実臨床でも使用することができますが、日本人集団でのデータや

リアルワールドでの効果

1次治療での効果

など、わたくし達が知りたいデータも揃ってきていて大変心強い治療薬のうちの一つと考えられます。

本研究では、現時点での2次治療以降でのロルラチニブの効果を見た結果であり実臨床に即していますし、先行する治療として44.6%がアレクチニブで、33.8%がセリチニブで治療を受けた症例群が登録されています。

特筆すべきは2種類以上のALK-TKIで治療後(EXP4/5コホート)においてもORR 38.7%と高い奏効率を示したことと考えます。ALK陽性でもEGFR陽性でも、1次治療で病勢増悪した後に、さらに強力な治療が残っているほど心強いことはありません

ロルラチニブは後治療に必ず使いたい選択肢のうちの一つと考えられます。

間質性肺炎のある肺がんに対する免疫治療の臨床的効果

肺癌, 肺癌勉強会, 間質性肺炎, 免疫治療, ICI, IO

『Non-inferior clinical outcomes of immune checkpoint inhibitors in non-small cell lung cancer patients with interstitial lung disease』(Lung Cancer 2021;155:120)より

まとめ

  • 間質性肺炎のある非小細胞肺がんに対する免疫治療は間質性肺炎のない症例と比べて臨床的効果は劣らない。

要約

〇間質性肺炎のある非小細胞肺がんに対する免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の効果は分かっていない。

〇2016-2018年に日本の10の医療機関でニボルマブ、ぺムブロリズマブで治療された進行/再発非小細胞肺がん症例を後ろ向きに解析した。

〇461例が登録され、

 -間質性肺炎のない「Non-ILD群」412例

 -間質性肺炎のある「ILD群」49例

に分けられた。

奏効率は

 -ILD群 49.0%

 -Non-ILD群 30.1%

で(p<0.01)、病勢コンロトール率は

 -ILD群 69.4%

 -Non-ILD群 51.2%

で(p=0.016)、ILD群はNon-ILD群に劣っていなかった。

〇非劣性結果としては無増悪生存期間や全生存期間でも観察された。

〇免疫関連有害事象のうち、間質性肺炎はILD群により多く認められた(30.6% vs 9.5%)。

〇間質性肺炎以外の免疫関連有害事象は2群で大きな差を認めなかった。

キュート先生の視点

本邦からの積極的な臨床試験の結果が『Lung Cancer誌』に発表されました。日常臨床で免疫治療は日々使用しておりますが、画像上間質影がありますと当然のごとく免疫治療の選択肢を除外していました。もちろん本研究を読んだ後でも、積極的に使用すべきではありませんし、間質性肺炎がActiveで悪さをしている時には絶対に避けるべきと考えていますが、完全に選択肢から除外してしまうべきではなさそうです。

本研究のILD群でも免疫治療を1次治療として28%、2次治療として27%と比較的フロントラインに使用しており、この試験に登録された先生方の積極性が伺えます。

今後の実臨床の参考にしたいと思って紹介致しました。ステキな研究を発表頂き、感謝致します。

【#子宮頸がんは予防できる】今日4月9日は「子宮の日」です

肺癌, 肺癌勉強会, 子宮頸がんは予防できる, みんパピ, 子宮頸がん, 子宮頸がんワクチン

子宮頸がんは予防できる

普段…肺がん診療に従事しているわたくしですが、

4月9日は『子宮の日(4・9の日)』ということで

本日は子宮頸がんの勉強をします!

(上は本日2021/4/9 「朝日新聞」一面広告です)

 

子宮頸がんの多くはHPVウイルスが原因

子宮頸がんの95-99%はHPV(ヒトパピローマウイルス)という

ウイルス感染が原因であることが分かっています。

多くの医療者が「エイチ・ピー・ブイ」って言っています。

 

子宮頸がんはがんの前段階病変が存在

子宮頸がんの特徴として「異形成(いけいせい)」と呼ばれる

がんの前段階の病変が存在します。

 

HPVワクチンががんを予防する証明が難しかった

HPVワクチンがHPVウイルス感染や

がんの前段階である異形成を防ぐこと

は今までの研究で確認されていました。

 

しかしながらワクチンが「がん」を防ぐかどうか

に関しては証明することが難しかったのです。

 

子宮頸がんは25-49歳に発症しやすいのですが、

10代でHPVワクチンを接種しても

10-40年後の長い期間観察して子宮頸がん発症がどうなるか

を研究で調べる必要がありました。

 

4価HPVワクチンが子宮頸がんリスクを63%下げる

昨年の最も権威のある医学雑誌『NEJM』

HPVワクチンが子宮頸がんを予防するという研究結果が

発表されました(NEJM 2020:383:1340)

肺癌, 肺癌勉強会, みんパピ, HPV, 子宮頸がん, 子宮頸がんは予防できる

この研究では…

〇2006-2017年のスウェーデンの国民データベースより。

〇10-30歳の女性 約167万人を

 -4価HPVワクチンを1回以上接種した53万人

 -HPVワクチンを接種しなかった115万人

を比較した大規模研究。

〇結果は

 4価HPVワクチンは子宮頸がんリスクを約63%下げる

ことが分かりました。

肺癌, 肺癌勉強会, HPVワクチン, みんパピ, 子宮頸がん, 子宮頸がんは予防できる

〇17歳以下で接種した子ども達の中で、子宮頸がんを発症したのは2人のみ。(リスクは88%減少)

〇17-30歳でHPVワクチン接種した群も53%は予防できる。

 

本研究から分かったことは

 -HPVワクチンが子宮頸がんリスクを1/3に下げる。

 -HPVワクチンは年齢が低いうちに接種した方が効果が高い。

ということです。

感染したHPVを治療する効果はないよ

専門家の意見では、

HPVワクチンはHPV感染を予防するものであり、

感染してしまったHPVを排除する効果はありません。

HPVワクチンではいくつかの「型」のHPVウイルス感染の予防効果があり、

すぐにそのすべての「型」に感染してしまうわけではないですので、

初めて性交を経験した後でも効果はあると考えられています。

ただできれば性交渉が始まる前に接種しておくことが望ましい

という考え方が一般的です。

 

「がんを予防する」ということ

わたくしは普段肺がん診療に携わっています。

肺がんでは、がんを予防する効果の高い薬やワクチンはありません。

もちろんタバコや大気汚染など肺を労わることはできますが、

どのくらいがん発症予防効果があるかは分かっていません。

 

日本では「HPVワクチン」の普及が諸外国に比べて大きく遅れています。

効果は十分に確認されています。

しかも子宮頸がんを発症する方は若い女性に多いのです。

 

子宮頸がんのこと。

HPV感染のこと。

HPVワクチンのこと。

 

多くの人に正しい医療情報が伝わることを

同じがん診療に携わる医療者として心から願っています。

「みんパピ」さん!全力応援しています!がんばって!!

 

ハッシュタグ『#子宮頸がんは予防できる』

もし「みんパピ」さんのプロジェクトに賛同頂けましたら、

 

 『#子宮頸がんは予防できる』

 

で拡散頂けると幸いです!

 

▼みんなで知ろうHPVプロジェクト「みんパピ」さんのサイトはこちら▼

【YouTubeライブ】SNS医療のカタチONLINE に出演しました

肺癌, 肺癌勉強会, SNS医療のカタチ, 肺がんを治したい

YouTubeライブ『肺がんを治したい』に出演しました!

「SNS医療のカタチ」のヤンデル先生こと市原真先生、けいゆう先生こと山本健人先生、ほむほむ先生こと堀向健太先生、大塚篤司先生にお声掛け頂き4月4日にお話しさせて頂きました。

 

内容は

 〇肺がんの治療

 〇肺がんの予防

 〇肺がんの正しい情報

ということで約15分で講演しました。

 

▼下記リンクから誰でも無料で視聴できます▼

今年は音声・動画配信も積極的に行っていきます。

 

YouTubeライブのご意見や感想もお待ちしています!