キュート先生の『肺癌勉強会』

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第61回 日本肺癌学会学術集会 閉幕

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第61回 日本肺癌学会学術集会 閉幕

先週11月12日~14日までの3日間、岡山で行われていた『日本肺癌学会学術集会』が無事閉幕致しました。

既治療非小細胞肺がんでのナブパクリタキセルのドセタキセルとの非劣性を示した『J-AXEL試験』、ニボルマブとイピリムマブの併用療法である『CheckMate227試験』の日本人サブセット解析の結果、KRASをターゲットとした分子標的薬『Sotorasib』の報告、多くの肺がん診療とAIの活用、COVID-19流行下での肺がん診療・・・

など数々の見どころ、聴きどころのあった学会でした。

ハッシュタグ発信『#JLCS20』は・・・あまり流行りませんでしたが、まだこれからオンデマンド配信も予定されておりますし、教育講演もありますのであきらめずに発信を続けたいと考えています。

それでは、学会に参加された皆さま、運営事務局の皆さま、学会長の木浦先生をはじめ岡山大の皆さま、大変お疲れ様でした。

これからも肺がん患者さんが少しでも笑顔で暮らせるよう、肺がん撲滅に向かって、このブログ『肺癌勉強会』も突き進んでいきます。

学会参加費の元を取れるか!『第61回 日本肺癌学会学術集会』開幕!

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『第61回 日本肺癌学会学術集会』開幕!

本日から3日間、岡山にて『第61回 日本肺癌学会学術集会』が開催されます。

現地とオンラインでのハイブリッド開催ですので、忙しい日常診療の合間でも、岡山が遠くても参加できる可能性がありますし、オンデマンドで後から講演を聴講することもできます。

今年に入ってから多くの学会がオンライン開催となり、参加費を払って「参加」自体は簡単になりましたが、参加費の元を取れるほどゴリゴリ勉強するかどうかに関しては自分次第です。

参加費のポイント還元?

この「肺癌学会」は学会参加の「出席点」は全くありません。

関連学会としてのポイントにはなりますが、専門医などはありませんので他の学会であるような認定医や専門医更新のための学会参加費がポイント還元される意味合いはかなり薄いです。

昨年までは忙しい日常診療の合間をぬって、外来を計画的に閉じて、患者さんを病院で留守番している先生方に申し送ってから学会会場に赴いていたわけですが、今年からは状況が異なります。

ニューノーマルな学会参加

会場が遠くても、辺鄙な場所でも、交通費が厳しくても、おうちでも、地球の裏側でも、仕事しながらでも、育児しながらでも参加して勉強することが可能です。

わたくしも先日の呼吸器学会やESMOでは、おうちで子ども達が眠りについた後にコソコソとオンデマンド配信を拝聴しておりました。

さぁ、学会参加費の元を取れるかどうかはあなた次第です!

「#JLCS20」ハッシュタグ発信 第61回 日本肺癌学会学術集会@岡山

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肺癌学会 ハッシュタグ発信「#JLCS20」

2020年11月12日(木)~14日(土)まで岡山にて『第61回 日本肺癌学会学術集会-肺癌撲滅を目指して2020-』が開催されます。

会長は岡山大の木浦勝行先生です。

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昨年も勝手に行わせて頂きましたが「ハッシュタグ発信」を今年もやりたいと思っています。

昨年は「#JLCS2019」のタグで

のようなツイートやFacebookでも辿ることができますし、医療情報サイト『ケアネット』でもこの取り組みを取り上げて頂きました。

今年はコロナ流行下での学会開催ですので、現地とオンラインの両方が行われるハイブリッド開催の学会です。

オンタイムで聴講できなくても、オンデマンドで講演を拝聴することもできますし、繰り返し見ることもできます。

注目演題に関しては、先日の『Medical Tribune』でも取り上げさせて頂きました。

ハッシュタグ発信は賛同者が居ましたら、ぜひ演題番号とハッシュタグ#JLCS20を添えて、聴講内容や感想をコメント頂ければ幸いです。

誰も賛同しなくても・・・とても淋しいですが、わたくし一人でもやらせて頂きます。

今年の肺癌学会のハッシュタグは

です。宜しくお願い致します。

 肺癌学会に参加される皆さまと一緒にゴリゴリ勉強できたら幸いです。

【JCOG1205/1206】完全切除の神経内分泌肺がんに対する術後イリノテカン+シスプラチンはエトポシド+シスプラチンを超えられず

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『Randomized Phase III Study of Irinotecan Plus Cisplatin Versus Etoposide Plus Cisplatin for Completely Resected High-Grade Neuroendocrine Carcinoma of the Lung: JCOG1205/1206』(JCO 2020, published on Nov. 2)より

まとめ

  • 完全切除ステージI-IIIAの高悪性度神経内分泌肺がんに対する術後イリノテカン+シスプラチンはエトポシド+シスプラチンを超えることはできなかった

要約

〇ステージI-IIIAの完全切除された高悪性度神経内分泌肺がん(HGNEC)に対する術後補助化学療法としてエトポシド+シスプラチンに対するイリノテカン+シスプラチンの優位性を検証した。

〇この『JCOG1205/1206試験』は完全切除されたステージI-IIIAの肺のHGNECの症例でのランダム化、オープンラベル、第3相試験である。

〇症例は無作為に

 -エトポシド(100mg/m2、DAY1-3)+シスプラチン(80mg/m2、DAY1)

 -イリノテカン(60mg/m2、DAY1,8,15)+シスプラチン(60mg/m2、DAY1)

に振り分けられ4コース投与された。

〇主要評価項目はITT集団での無再発生存期間(RFS)とされた。

〇2013年4月から2018年10月に221例が登録され、エトポシド+シスプラチン群に111例、イリノテカン+シスプラチン群に110例振り分けられた。

〇第2中間解析で試験の早期終了が指摘された。

〇フォローアップ期間の中央値24.1カ月時点で、3年無再発生存期間は

 -エトポシド+シスプラチン群 65.4%

 -イリノテカン+シスプラチン群 69.0%

でHR 1.076(95%CI:0.666-1.738、p=0.619)であった。

〇グレード3-4の有害事象はエトポシド+シスプラチン群が頻度が高く、

 -発熱性好中球減少症 20% vs 4%

 -好中球減少症 97% vs 36%

だった。

〇一方、食思不振(6% vs 11%)や下痢(1% vs 8%)とイリノテカン+シスプラチン群の方が頻度の高い有害事象もあった。

〇イリノテカン+シスプラチン併用療法は完全切除されたHGNEC症例でRFSを改善する上でエトポシド+シスプラチン併用療法よりも優れているわけではなかった。

〇したがってエトポシド+シスプラチン併用療法が標準治療のままと考えられる。

キュート先生の視点

肺の神経内分泌腫瘍に関しては、小細胞肺がんの治療に準じて治療戦略を立てていくことが一般的です。

限局型小細胞肺がんで手術が可能な場合には術後にシスプラチン+エトポシド併用療法による治療を行うように「肺癌診療ガイドライン」でも勧められています。

ただし「LCNEC」に対して周術期治療がどうなのか、に関してはエビデンスはなく、小細胞肺がんでも周術期の治療選択肢はエビデンスの乏しい領域です。

本研究はそんなエビデンスの少ない領域を補完するような大事な結果であったと考えます。

イリノテカンに効果の高い日本人集団でイリノテカン+シスプラチンがエトポシド+シスプラチンに勝てなかった、という事実は大きいのではと思います。

【書評】ホスピタリスト ~ホスピタリストのための画像診断①胸部・縦隔編~

肺癌, 肺癌勉強会, 画像診断, ホスピタリスト, 前田恵理子

書評

東大病院放射線科 前田恵理子先生が編集された『ホスピタリスト 画像診断①胸部・縦隔編』を紹介したいと思います。

 

呼吸器内科医はほぼ毎日胸部X線やCTを見て肺がん、肺炎、呼吸不全など多くの呼吸器疾患の患者さんの診療に当たっています。

わたくし達でもX線やCT画像を完璧に読影できるわけではありません。

ましてや胸部画像に慣れていない若い先生方は

白くなっているのは分かるんだけど、肺炎と言っていいのか・・・

丸っこい影が映っているんだけど、経過を見ちゃっていいのか・・・

異常はなさそうだけど、患者さんは咳が出るって言ってるし・・・

と、いつも頭を悩ませていることと思います。

 

実際わたくしの病院でも、画像を確認して欲しい・・・と研修医や若い専攻医の先生からよくコールがあります。

本書では初学者向けに第一線で活躍される放射線科の先生方が、ぜひ押さえておくべき画像診断の知識や読影のポイントについて、総論的な内容から呼吸器疾患・循環器疾患と疾患別にも分かりやすくまとめてくださっています。

10年以上呼吸器疾患と戦っているわたくしでも、なるほど納得な部分があり、専門的かつ今日からの診療に役立てることができるポイントもあり、ぜひ研修医や内科専攻医の先生方には一読頂きたい内容となっています。