キュート先生の『肺癌勉強会』

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がん患者さんに対する新型コロナワクチン

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ワクチンについて

ワクチンとは、人工的に人の身体の中に免疫/抵抗力を作り出すことです。

人の体は、例えば麻疹(はしか)という病気があります。

通常は小さい頃にかかって熱が出たり、発疹が出たりする病気ですが、

一度かかって自然に治ると麻疹にかからない身体になります。

これは身体に麻疹に対する抵抗力ともいうべき「免疫」ができるからです。

病原体そのものや、病原体を構成する物質をもとに作った

ワクチンを接種して抵抗力をつけることで病原体に感染する代わりをします。

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1.生ワクチン

「生ワクチン」は病原性を弱めた病原体からできています。

接種すると病気にかかった時とほぼ同じ免疫がつくことが期待できます。

副反応として病気にかかった時のような症状が出ることがあります。

感染と言っても、多くは軽い症状で済みます。

MRワクチン(麻疹・風疹)、水痘(みずぼうそう)ワクチン、おたふくかぜワクチンなどがあります。

2.不活化ワクチン/組み換えタンパクワクチン

感染力を無くした病原体や病原体を構成するタンパクからできています。

1度接種しただけでは必要な免疫を獲得するコトができないため

複数回の接種が必要となります。

4種混合(ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ)、2種混合(ジフテリア・破傷風)、日本脳炎のワクチンがそうです。

インフルエンザのワクチンもこの種類のワクチンになります。

3.mRNAワクチン・ウイルスベクターワクチン

このワクチンはウイルスを構成するタンパクの遺伝情報を投与します。

これらの設計図ともいうべき遺伝情報をもとに

体の中にウイルスの一部のたんぱく質を作り出すことで

人の体の中に免疫が作られます。

今回日本で接種予定となっているワクチンは、新型コロナウイルスの表面の

一部分を身体に作り出すことで免疫を作りだすタイプのワクチンです。

ファイザー社とモデルナ社のワクチンはmRNAワクチン。

アストラゼネカ社のワクチンはウイルスベクターワクチンという種類です。

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ワクチンの有効性

これまで世界中で行われた臨床試験の結果から、

新型コロナウイルスに対するワクチンの有効性は

 

 -ファイザー社mRNAワクチン 95%

 -モデルナ社mRNAワクチン 94%

 -アストラゼネカ社ウイルスベクターワクチン 90%(低用量→標準量)

 -アストラゼネカ社ウイルスベクターワクチン 60%(標準量→標準量)

 

となっています。(NEJM 2020;383:2603, NEJM 2021;384:403, Lancet 2021;397:99)

 

ここで示されたワクチンの有効性は

 

ワクチンを打たなかった人の発症率より、

接種した人の発症率が95%少なかった

 

という意味です。

 

発症リスクが1/20になったとも言い換えることができます。

がん患者と新型コロナウイルス感染症

過去の報告から一般的にがん/悪性腫瘍を患っている患者さんは

新型コロナウイルス感染症のリスクと言えます。

しかもコロナに感染した後の重症化の割合も

がんのない方に比べると高いという報告が多くみられます。

ただし抗がん剤・放射線治療・免疫治療などがんの治療の種類や

がんの状態による感染リスクや重症化リスク・死亡リスクは

報告によって結果がまちまちです。

様々な報告がありますが、がん自体が寿命や死亡リスクと関連しております。

治療に差し障りのある新型コロナ感染は防ぐに越したことはない、

と考えることができます。

がんと新型コロナワクチン

上記に挙げた新型コロナワクチンの臨床試験でも、

がん症例に絞って効果や副反応がどうだったかという結果はありません。

試験によっては抗がん剤などで免疫が抑えられているような方は、

臨床試験からそもそも除外されています。

ただ、日本の内閣官房や厚生労働省の優先接種の方の中に「持病のある方」が

あり、その中に免疫が抑えられる可能性のあるがんが含まれます。

臨床試験でもワクチン接種群で約21%の方が何かの持病を持っていた方に

接種がなされています。

ただ一般的な注意として免疫抑制剤や抗がん剤で

極めて免疫が低下している方の接種に関しては

主治医の先生とよく相談する必要があると考えます。

 

イギリスの「Cancer Research UK」では治療ごとにもコメントがなされており、

-免疫治療を受けている場合には、免疫治療により自身の免疫が賦活化している可能性がありますので、副反応が強く出る可能性があります。ただ十分なエビデンスがありません。

-殺細胞性抗がん剤治療中の場合には、一般的にワクチン接種はいつでも可能と考えられますが、治療スケジュールに差し障りの内容に予定を組む必要があります。

-放射線治療や手術療法でもワクチン接種は推奨されます。

 とされています。

今後、日本でも臨床腫瘍学会や各がん種の専門学会、内閣官房や、厚生労働省から指針が出されるかと考えますので、注目していきます。

わたくしも携わっている『コロワくんサポーターズ』でも

がん/悪性腫瘍と新型コロナワクチンについては注視していきます。

▼『コロワくんサポーターズ』は皆様からのクラウドファンディングで成り立っております▼