『Cemiplimab monotherapy for first-line treatment of advanced non-small-cell lung cancer with PD-L1 of at least 50%: a multicentre, open-label, global, phase 3, randomised, controlled trial』(Lancet 2021;397:592)より
まとめ
- PD-L1 50%以上の非小細胞肺がんに対する抗PD-1抗体であるセミプリマブは全生存も無増悪生存も有意に改善
要約
〇PD-1抗体であるセミプリマブのPD-L1発現率50%以上の進行非小細胞肺がんの1次治療について評価した。
〇『EMPOWER-Lung1試験』は多施設、オープンラベル、国際第3相試験で、24の国、138施設から18歳以上、組織学的/細胞診的に確定した進行非小細胞肺がんでECOG-PS 0-1、非喫煙者の症例が集められた。
〇症例は1:1に
-セミプリマブ 350mg、3週毎
-プラチナ併用化学療法
に振り分けられた。
〇病勢増悪を認めたら、化学療法群からセミプリマブ群へクロスオーバーが認められた。
〇主要評価項目は全生存期間と無増悪生存期間とし、ITT集団とPD-L1発現率50%以上の集団で評価された。
〇有害事象は少なくとも1回以上治療薬が投与された全症例で評価された。
〇ITT集団として710例が登録され、PD-L1発現率50%以上の症例は563例だった。
〇ITT集団での全生存期間の中央値は
-セミプリマブ群 未到達(95%CI:17.9-未到達)
-プラチナ併用化学療法群 14.2カ月(95%CI:11.2-17.5カ月)
だった(HR 0.57、p=0.0002)。
〇無増悪生存期間の中央値は
-セミプリマブ群 8.2カ月(95%CI:6.1-8.8カ月)
-プラチナ併用化学療法群 5.7カ月(95%CI:4.5-6.2カ月)
だった(HR 0.54、p<0.0001)。
〇74%と高いクロスオーバー率だったにもかかわらず、ITT集団での全生存も無増悪生存もセミプリマブは有意差をもって改善した。
〇グレード3-4の有害事象はセミプリマブで治療された355例中98例(28%)、化学療法群の342例中135例(39%)で報告された。
キュート先生の視点
現在の『肺癌診療ガイドライン2020年度版』では「PD-L1発現率」や「ドライバー遺伝子変異」によって治療戦略を考えています。
特に「PD-L1発現率」が50%以上ですとぺムブロリズマブ単剤(キイトルーダ®)が高い効果を示すことが分かっておりガイドラインでも推奨されています。
ただ、最近の肺がんの実臨床ですと、PD-L1発現率はあまり参照せずに「複合免疫療法」を1次治療に選択することも多く、医療機関や治療を検討する医療者によって意見が分かれることもあるかと思っています。
今回のセミプリマブは日本では未承認の薬剤ですが、この『EMPOWER-Lung1試験』の結果を見ても、やはりPD-L1高発現の場合には「PD-1」単剤治療は個人的にはアリかな、と思っています。
病勢が強く後治療でプラチナが入りにくい症例や、治療失敗が許されないような差し迫った症例に対しては「複合免疫療法」が望ましいことは言うまでもありませんが、化学療法と免疫療法の療法の副作用管理は慎重に行う必要があります。