キュート先生の『肺癌勉強会』

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【書評】『世界一わかりやすい「医療政策」の教科書』

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 書評

いまコロナパンデミック下で最前線の現場でも通常の診療が行えない状況にあり、日本の医療も大きな転換点にあると考えます。以前から興味のあった「医療政策」についてですが、なかなか日常診療の合間に系統だって勉強する時間がなく、今回、UCLAの津川友介先生が出版された本が目に留まりました。この機会に医療政策の本質について真剣に学びたいと思い、本書を手に取りました。

 

 津川 友介 『世界一わかりやすい「医療政策」の教科書』 医学書院

内容は医療経済学、統計学を中心に、政治、経営、倫理、社会学、費用効果分析の項目に分けて記されており、最終章にアメリカの医療制度の現状についてオバマケアからトランプケアへの移行の歴史や問題点、そして日本が学ぶべきことが考察されて締めくくられています。筆者がハーバードで学んだ医療政策や医療経済学のセオリーとエビデンスが本書中にちりばめられており、政策の目的を達成するための「エビデンスに基づいた政策立案EBPM」のPDCAを回すことに主眼が置かれて一つ一つ理解しながら読み進めることができます。

 

日本も今後さらに少子高齢化社会が進み、日本国民が安心して質の高い医療を受けるために、医療費が上がることによる増税や保険料の負担を軽減するための「綿密に設計された医療政策」、そしてコロナ禍で従来の医療政策が根底から覆されようとしている現状において「新しい未来の医療政策」が必要となります。そのために本書は医療政策の入門書として、医療現場で働いている医療従事者や日本の政策立案者にぜひ読んで頂きたい1冊です。医療政策の本質を理解するための膨大な量の情報が250ページにギュッと凝縮されており、骨太な内容のため丁寧に読み解くことをおススメします。