キュート先生の『肺癌勉強会』

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COVID-19を発症したがん症例の重症化は非がん症例の3.61倍のリスク

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『Clinical characteristics and risk factors associated with COVID-19 disease severity in patients with cancer in Wuhan, China: a multicentre, retrospective, cohort study』(Lancet Oncol 2020, Published May 29, 2020)より

まとめ

  • COVID-19を発症したがん症例の重症化は非がん症例の3.61倍のリスク

要約

 〇中国 武漢の9つの病院に2020/1/13-3/18までに入院したCOVID-19症例でがん症例232例と非がん症例519例を比較検討。

〇がん症例の232例中23例が肺癌症例。

〇がんに対する治療としては手術 85%、化学療法または放射線治療 92%、分子標的療法または免疫療法 14%に行われていた。

〇WHOガイドラインで「重症」COVID-19と診断された症例は、がん症例 64%、非がん症例 32%でOR 3.61であった。

〇がん症例の重症化因子として、年齢、IL-6高値、プロカルシトニン高値、Dダイマー高値、TNFα高値、NT-proBNP高値、リンパ球低値、CD4+T細胞減少、アルブミングロブリン比低下、進行癌が挙げられた。

キュート先生の視点

本研究は1月から3月までの症例で中国武漢の研究であり、状況が今の日本と全く異なるのであくまで参考程度に。

 

様々な状況があり、がん症例はがんでない症例と比較して重症例が3.61倍だった、とのこと。そもそもコロナが出たての中国にて、報道でもなされていたのを覚えているが多くの患者さんのが病院に所せましと押し寄せている状況では医療資源の的確な配分ができていたか分からず、適切な診療ができていたかも定かではないが、このようなデータ。参考程度ではあるが、3.61倍はやはり見過ごせない数字

 

非がん症例でもリスクと示されている因子のほか、進行がんであることやアルブミンが低いこと、TNFαなどの炎症性サイトカインが高いことはがん症例でも重症化のリスクであることは理解できる。

 

がん患者さんは抗癌剤による骨髄抑制、ステロイドの使用、頻回の病院受診、がんを患っていることで体力低下、肺がんであれば気道の物理的狭窄や閉塞による肺炎の可能性、などなど様々な要因で感染リスクであることは想像できる。やはり今後も気を引き締めてがん診療に当たりたいと思わされた。