キュート先生の『肺癌勉強会』

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がん症例の新型コロナ感染での重症化因子:肺癌、血液がん、転移性腫瘍

肺癌, 肺癌勉強会, 新型コロナウイルス, COVID-19

『Patients with Cancer Appear More Vulnerable to SARS-COV-2: A Multicenter Study during the COVID-19 Outbreak』(Cancer Discovery 2020;10:783)より

まとめ

  • がん症例の新型コロナ感染での死亡率は非がん症例の2.34倍。重症化因子として肺癌、血液がん、転移性腫瘍が挙げられた。

要約

〇中国武漢の14施設での多施設研究。

〇2020年1月1日から2月24日まで登録。

〇COVID-19と診断されたがん症例 105例と非がん症例 536例の比較検討。

〇喫煙歴は34.28% vs 8.58%とがん症例が高い。

〇105例のがん症例での死亡率は11.43%。そのうち9例の血液がんで33.33%、22例の肺がんで18.18%の死亡率。

〇両群を比較すると

 -死亡率 OR 2.34(95%CI:1.15-4.77、p=0.03)

 -ICU入室 OR 2.84(95%CI:1.59-5.08、p<0.01)

 -重症あるいは致命的な症状 OR 2.79(95%CI:1.74-4.41、p<0.01)

でがん症例がいずれも高い確率であった。

〇重症化因子としていくつか検討されており、「肺がん」「血液がん」「転移性腫瘍」が重症化と関連していた。

がん治療と重症化の検討では「手術」「免疫治療」「化学療法(抗がん剤)」が重症化と関連しており、「標的療法」「放射線治療」は関連が薄かった。

キュート先生の視点

2020年1月から2月末までの中国武漢からの報告です。当時の状況を思い起こすと、相当混乱した中で登録された試験の結果です。

がん症例の死亡率が11.43%は『TERAVOLT』レジストリー研究の33%よりは低いが、10人に1人と考えると高い印象です。

死亡率や重症化もがん症例が高い割合であることが示されていますが、この研究ではICU入室率も高い状況です。ほかの国の研究では「進行がんでのICU入室はなかなかためらわれる」というような考察もあったため、やはり担がん患者さんでの新型コロナウイルス感染症に関しては国や地域、社会情勢によってもだいぶアウトカムが異なると考えられます。

本研究ではCOVID-19診断前40日での手術、免疫治療、化学療法が重症化と関連があり、「がん治療が死亡リスクと関連がない」というUKの報告とは結果が少し異なります。

多くのがん+COVID-19に関連する論文を拝見しましたが、がん症例と非がん症例を比較すると、重症化や死亡に関してはがん症例がリスクであることはほぼ一貫しておりますが、がん治療に関しては個々の症例や治療内容でも異なると考えられますし、死亡率に関してもまちまちですので、日本の臨床現場に当てはめることは困難です。