キュート先生の『肺癌勉強会』

肺癌に関連するニュースや研究結果、日常臨床の実際などわかりやすく紹介

がん症例の新型コロナ感染症のリスク因子(Memorial Sloan Ketteringがんセンターより)

肺癌, 肺癌勉強会, 新型コロナウイルス, COVID-19

『Chemotherapy and COVID-19 Outcomes in Patients With Cancer』(JCO 2020, published on Aug 14)

まとめ

  • 直近の殺細胞性抗がん剤の使用はCOVID-19の重篤なイベントと関連なし

要約

〇新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の死亡率は、一般集団よりもがん患者の方が高い。

〇COVID-19のがん関連の危険因子は完全には分かっていない。

〇メモリアルスロンケタリングがんセンターで309例のCOVID-19に罹患したがん症例の臨床的特徴と転帰を観察した。

〇結果は

 -殺細胞性抗がん剤の使用は、COVID-19重症化イベントと関連していなかった(HR 1.10、95%CI:0.73-1.60)。

 -血液悪性腫瘍はCOVID-19重症化と関連(HR 1.90、95%CI:1.30-2.80)。

 -肺癌症例はCOVID-19重症化と関連(HR 2.0、95%CI:1.20-3.30)。

 -COVID-19診断時のリンパ球減少は重症化と関連(HR 2.10、95%CI:1.50-3.10)。

 -COVID-19診断14〜90日前のベースライン好中球減少は転帰が悪かった(HR 4.20、95%CI:1.70-11.00)。

 -年齢61歳以上はCOVID-19重症化と関連(HR 1.90、95%CI:1.20-2.60)

〇抗がん剤使用、がんの種類、COVID-19の関連は複雑であり、さらなる調査が必要と考えられた。

キュート先生の視点

本研究はアメリカのスローンケタリングがんセンターで3月から4月にかけて行われた観察研究であり、全ての結果が現在の日本に当てはめられるわけではありませんので注意が必要です。

調査された309例のCOVID-19に罹患したがん症例は23%が血液がんで残りが固形がんですが、肺がんは全体の9.4%のみとなっております。がん患者さんに朗報なのは抗がん剤使用とCOVID-19の重症化イベントは関連がなかった、との結果です。ただし抗がん剤を継続しており、慢性的にベースラインの白血球・好中球が少ない場合には悪い転帰と関連している結果でしたので注意が必要です。

そして血液がんや肺がんはがんの中でも重症化リスクなのでより慎重な管理が求められます。

本研究の結果を通じて、コロナ感染拡大下の日本でもがん患者さんが不利益を被ることなく治療が完遂できることを望みます。