キュート先生の『肺癌勉強会』

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がんに関わる医師の25-38%が『燃え尽き症候群』を経験

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『Oncologist Burnout: Causes, Consequences, and Responses』(J Clin Oncol 2012;30:1235)より

まとめ

  • 腫瘍に関わる内科医の25-35%、放射線科医の38%、外科医の28-36%が『燃え尽き症候群(Burnout)』を経験

キュート先生の視点

がんは医療者としては関わらずに避けては通れない疾患のうちの1つであり、がん診療やがん治療は非常にやりがいがある傍ら、最もストレスの多い医療分野の1つでもあります。

がん治療に携わる医師は日常的に生死の決定に直面し、重篤な有害事象を有する治療薬を厳格にコントロールし日々使用しています。また検査法や治療薬は急速に進歩しており、日々新しい知見のペースに遅れずについていく必要があります。

日常診療ではがん患者さんやその家族と共に、がん治療の遂行や緩和医療の提供を全神経を注ぎ上手に選びながら歩き続けなければいけません。

がん診療に携わる医療者には、このような仕事関連のストレスによってうつ病、不安、倦怠感、精神的な生活の質の低下など、さまざまなカタチや症状として現れる可能性があります。

その中で『燃え尽き症候群(Burnout)』は医師の間で最も一般的な苦痛の1つであり過去の報告では

 -腫瘍内科医の中で25-35%

 -放射線腫瘍医の中で38%

 -外科医の中で28-36%

の有病率で起こると言われています。

 

わたくしも医学を学び始めて20年以上、医師になって16年が経ち、多くのがん患者さんの診療に携わってきました。幸いがん診療が原因で体調を崩すまでには至っておりませんが、常日頃から相当な神経を注いで診療時間を過ごしていることは実感しています。

論文中にも書かれていますが、がん診療に携わる医療者は労働時間がより長く、自分時間や家族との時間が取れない医師が多いことなどもストレスが増えてしまう原因として挙げられております。その改善策としては自分自身、同僚、組織全体でがん診療に当たっている医療者の仕事や感じているストレスについて理解する必要があり、睡眠、栄養、運動、メンタルヘルス、働き方などをサポートし、目標を定めて見失わないことが大切と考えられています。

このコロナ禍になり、医療現場もさらに神経を使うことが増えてきましたが、がん診療の現場では相当なストレスがあるものと考えます。この状況下でがん治療を受けている患者さんのことを思うとそうも言っていられないのですが、がん診療に携わる医療者も一人の人間です。日常診療で知らないうちに受けているストレスを理解し、自身の健康にも気遣ってがん診療に全力を投じることができたらがん患者さんにとっても幸いなことだと信じて本論文を紹介しました。