『Updated Analysis From KEYNOTE-189:Pembrolizumab or Placebo Plus Pemetrexed and Platinum for Previously Untreated Metastatic Nonsquamous Non–Small-Cell Lung Cancer』(Journal of Clinical Oncology 2020;38:1505)より
まとめ
- EGFR/ALK変異のない非扁平非小細胞肺癌616例
- 「ぺムブロリズマブ+プラチナ+ペメトレキセド」群と「プラチナ+ペメトレキセド」群の比較試験『KEYNOTE189試験』のアップデートデータ
- ぺムブロリズマブ併用群でのOS中央値 22.0カ月
- OSの結果はPD-L1 TPS、肝転移、脳転移にはよらない
- 有害事象も管理可能
要約
〇転移性進行非扁平非小細胞肺癌の1次治療として、『KEYNOTE189試験』(NEJM2018)の結果から、ぺムブロリズマブ+プラチナ+ペメトレキセドによる治療がコントロール群に比較して有意にOS、PFSを延長したことが知られている。
〇今回は『KEYNOTE189試験』のアップデートデータについて報告する。
〇616例の患者群は
ぺムブロリズマブ+プラチナ+ペメトレキセド群:410例
プラチナ+ペメトレキセド群:206例
にランダムに振り分けられた。
〇フォローアップ期間の中央値:23.1カ月
〇全生存期間OSの中央値
ぺムブロリズマブ+プラチナ+ペメトレキセド群:22.0カ月
プラチナ+ペメトレキセド群:10.7カ月
でHR 0.56(95%CI:0.45-0.70)。
〇無増悪生存期間PFSの中央値
ぺムブロリズマブ+プラチナ+ペメトレキセド群:9.0カ月
プラチナ+ペメトレキセド群:4.9カ月
でHR 0.48(95%CI:0.40-0.58)。
〇OS、PFSのぺムブロリズマブによるベネフィットは、
PD-L1発現率、肝転移や脳転移の有無には寄らない。
〇グレード3-5の有害事象発現は同等だった。
キュート先生の視点
2018年のNEJM誌に報告された際には、フォローアップ期間の中央値が10.8カ月での発表でした。今回は23.1カ月のフォロー期間があってのデータであり、長期にわたってコントロール群に比較して大きな差をつけてぺムブロリズマブ併用群が効果を示しています。本文中に示されているぺムブロリズマブ併用群の1年生存率、2年生存率は70.0%、45.5%と2年経過しても約半数が生存しております。そして抗PD-L1抗体であるアテゾリズマブを含む複合免疫療法であるABCP療法を意識しているからか、予後の悪い肝転移のある症例に関してもサブ解析がなされておりますが、OS中央値が12.6カ月とコントロール群の6.6カ月を引き離している生存曲線が本文中に示されています。
免疫チェックポイント阻害薬の使用しにくい間質性肺炎や自己免疫疾患などの併存症がない進行非扁平非小細胞肺癌症例に関しては、この『KEYNOTE189』レジメンが強く推奨されます。
ただし、本研究に含まれないようなEGFRやALK遺伝子変異陽性の症例や間質性肺炎合併肺癌症例などに関しては、別途治療選択をする必要があり、またプラチナやペメトレキセドが使用しにくい腎機能障害のあるような症例に関しても検討が必要となります。
PD-L1が高発現の症例に関してはぺムブロリズマブ単剤で治療(『KEYNOTE024試験』(NEJM2016))を開始するか、この『KEYNOTE189』レジメンで開始するかは、比較試験ないために正確な答えが無く議論が分かれるところです。個人的には本研究の結果を受け、ぺムブロリズマブ併用可能用例であれば、この『KEYNOTE189』レジメンで開始し、高い奏効率と長期にわたる効果、そして初期増悪の防止に期待したいと考えています。