最近、世の中は「新型コロナウイルス」の話題で埋め尽くされていますが、正しい情報は皆さまのもとに届いていますでしょうか。
新型コロナウイルスの現在分かっている知識や感染対策、そしてウイルス拡大に伴う経済活動など多くの社会でウィズコロナでの活動が強いられている状況です。わたくし自身も多くの本、ニュース、論文などあらゆる媒体で知識をインプットしておりますが、今回、呼吸器内科医でありAmazonベスト1000レビュワーでもあるわたくしから見てぜひ多くの人におススメできる書籍を4つに絞ってお伝えしたいと思います。
- 岡 秀昭 『新型コロナウイルス COVID-19 特講』 中外医学社
- 岩田 健太郎 『感染症パニックを防げ!』 光文社新書
- 『アフターコロナ』 日経BP
- 坂本 史衣 『感染対策40の鉄則』 医学書院
新型コロナの知識を整理するために
岡 秀昭 『新型コロナウイルス COVID-19 特講』 中外医学社
埼玉医科大学総合医療センター 総合診療内科・感染症科教授の岡秀昭先生の著書です。
2020年6月時点での新型コロナウイルスの疫学、病態、診断、治療などが分かりやすくまとめられており、知識の整理にもってこいの本書。
後半は横浜市立みなと赤十字病院感染症科部長の渋江寧先生と実際の3症例について、現場での臨場感あふれる症例検討がなされています。
【全日本国民必読之書📚】
— キュート先生🤗呼吸器内科医 (@cutetanaka) 2020年7月7日
埼玉医 岡秀昭先生の著書『新型コロナウイルスCOVID-19特講』が届きました。現時点での疫学や病態、診断や治療など分かりやすいまとめ。後半は3症例の現場での臨床的な検討が掲載されています。医療者だけでなく一般の方にも読める良書‼️
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新型コロナ診療に当たる医療従事者はもちろんのこと、新型コロナウイルスの現状について理解を深めたい一般の方にも読めると思います。多くの方に正しい知識を持って頂くために読んで頂きたいおススメの1冊です。
パニック下だと人のクールかつ理性的な判断を難しくさせる
岩田 健太郎 『感染症パニックを防げ!』 光文社新書
学生のころから感染症の教科書で高名な先生でしたが、今回の新型コロナウイルス感染症騒動でクルーズ船・ダイヤモンドプリンセス号へ乗り込み、内部情報について発信したことで世間でも注目された神戸大の岩田健太郎先生が6年前に記した書です。
クルーズ船内部の情報を明かしたYouTube発信前にもご自身が本書を読んでおけば良かったのでは・・・、と個人的に思っておりますが、冷静で感染対策の先の先を見据えた本書です。6年前の本ですが今一度読んでみますと、気持ちの持ちようが変わり今日からの生活の支えになること間違いなしです。
岩田先生曰く
炭素、SARS、新型インフルエンザなど種類は異なる病原体ではあるが、共通するのは「パニック」。パニック下だとクールかつ理性的な対応を困難にし、感染症の実害以上の苦しみを与えることとなる。
- 感染対策の目的は感染症や耐性菌を減らすことであり、チーム作りや会議の開催ではない
- 効果的なコミュニケーションはリスクを減らし、リスクに付随するパニックを減らすことにも有効
- 感染症の特徴は①感染する、②目に見えないことが多い、③局地的/短期的に集団発生することを理解する
- 新型インフルエンザの時も「不要不急の外出制限」が「経済活動の縮小」のリスクを生んだ
- 自然災害や感染症の流行を検討する場合には、リスクアセスメントが正確でないことが多いので、ピンポイント予測ではなく予測が外れる可能性も踏まえて幅を持たせて臨機応変に考える
- リスクコミュニケーションを効果的に行うためには、専門的知識が十分にあり、信頼されていることが大事
- リスク下では短いメッセージを繰り返し伝えることが大事で、積極的で繰り返される情報提供はデマに対する効果的な対策になる
- 知識のない多くの人は、怖いところと恐くないところを理解しないまま怖がってしまう
- リスクマネジメントの途中でも繰り返し「目的」を明確にする。目的に今の行動があっているかを確認する
- 自分の専門範疇外は中途半端なコメントをしない
と現在の新型コロナウイルス感染が拡大する中で、知っておいた方が良い知識や考え方が岩田先生の多くの経験と共に散りばめられています。巻末の岩田先生ご自身が経験されたエボラ、炭疽菌、SARS、新型インフルエンザなどの記載も興味深く拝読しました。「今」読むべき本としておススメします。
各業界でのアフターコロナの光景
『アフターコロナ』 日経BP
3つ目に紹介するのはMOOK本(雑誌のように読める本)『アフターコロナ』です。
わたくしは感染症指定病院で勤務しており、医療の最前線で新型コロナウイルスと対峙しておりますが、多くの社会で現在「ウィズコロナ」時代での感染対策を視野に入れた新しい行動様式が強いられています。
本書では前半は現在までのコロナウイルスの猛威と各業界での変化を、そして後半では31人の日本を牽引する指導者が語る今後のアフターコロナでの考えを学ぶことができます。
医療の専門家から見て、感染対策や今後の医療の憶測上、各業界での見通しが多少不安なところも多々ありますが、日本の社会を支える各業界のキーパーソンたちが考える世界を垣間見ることができ大変勉強になります。
わたくしの知識や診療経験が場合によっては各業界の何かになればと思い、こちらからも社会を勉強するために役に立ったMOOK本でした。
多くの社会で知っておきたい感染対策のキホン
坂本 史衣 『感染対策40の鉄則』 医学書院
もし医療従事者で「感染対策」に興味があるのであれば、一度聖路加国際病院QIセンター感染対策室の坂本史衣先生の本書に目を通されることをおススメします。
内容は感染対策に対して「何を行うのか」についてのキホンと、「どう行うのか」を坂本先生ご自身の具体的に行った対策について分かりやすく書かれています。
前半は感染対策の評価方法や医療情報の収集方法、臨床疫学や統計学など感染対策の基礎について、後半は具体的な感染対策の立て方や実際の現場での感染症の伝播防止の方法について書かれています。
医療機関での感染対策を想定して書かれていますので、非医療者の方には難しい内容です。今後、多くの社会で「プラス感染対策」を意識した行動パターンの実践が求められますので、もし「感染対策」に興味がある方は強力な相棒になること間違いなしです。
まとめ
現時点で多くの新型コロナ関連の書籍が出版されておりますが、一般的な新型コロナウイルスの知識について岡秀昭先生の『新型コロナウイルス COVID-19 特講』、新型コロナ感染拡大で混乱した世の中に対応するために岩田健太郎先生の『感染症パニックを防げ』、多くの社会でウィズコロナ時代に突入しプラス感染対策でどのように生きていくのかを考えるためのMOOK本『アフターコロナ』、そして専門的な知識が欠かせない領域ですが新しい生活様式で必要となっている感染対策の基本を記した坂本史衣先生の『感染対策40の鉄則』を紹介させて頂きました。
またがん診療においても、呼吸器診療においても、新型コロナ対応においても皆さまのお役に立てるような書籍がありましたら紹介していきたいと思っています。