『21st-Century Hazards of Smoking and Benefits of Cessation in the United States』(NEJM 2013;368:341)より
まとめ
- タバコを吸っている人は喫煙歴のない人と比べて平均寿命が10年以上短く、40歳までに禁煙するとタバコ関連の死亡リスクが90%低下
要約
〇1980年代の研究から、「喫煙はアメリカにおける35-69歳の死亡原因の25%を占める」と推定されている。
〇年齢別の喫煙リスクと禁煙のメリットについての指標は分かっていない。
〇本研究では全米で行われた「健康聞き取り調査」で1997-2004年に調査された25歳以上の男性 88496例、女性 113752例の喫煙歴、禁煙歴と2006年までの死亡(男性 7476例、女性8236例)について関連を調べた。
〇死亡に関連するハザード比は年齢、教育水準、肥満度、アルコール摂取量で補正を行った。
〇25-79歳では現喫煙者の全ての原因の死亡率は喫煙歴のない人と比較して
-男性 HR 2.8(99%CI:2.4-3.1)
-女性 HR 3.0(99%CI:2.7-3.3)
約3倍高かった。
〇喫煙における死亡(超過死亡)の多くは腫瘍、血管系、呼吸器、そして喫煙が誘引と考えられる他の疾患によるものだった。
〇25歳から79歳まで生存する確率は喫煙歴のない人は現喫煙者と比較して
-男性 61% vs 26%
-女性 70% vs 38%
と約2倍高かった。
〇現喫煙者の平均余命は、喫煙歴のない人と比較して約10年以上短かった。
〇25-34歳で禁煙した人、35-44歳で禁煙した人、45-54歳で禁煙した人はタバコを吸い続けた人と比較して平均余命がそれぞれ10年、9年、6年長かった。
キュート先生の視点
NEJMの有名なタバコに関する論文を取り上げてみました。知人でも患者さんでも若い喫煙者を見ると必ずお伝えするデータです。『アメリカでの21世期のタバコの害と禁煙のメリット』というインパクトのあるタイトルで医療者なら覚えておいた方がいい内容なので取り上げてみました。
図2にも示されていますが、禁煙する年齢が若ければ若いほど禁煙の恩恵を受けることができます。50歳以降でも全く喫煙のない方と比較すると生存率は落ちますが、吸い続けた方と比較すると大分曲線が上になることが分かります。
呼吸器の患者さんは長期の喫煙により肺が障害されてしまって、いま苦しんでいる方も大勢いらっしゃいます。呼吸器内科医として、特に若い方にはタバコを吸い続けることについて理解を深めて欲しいと思っています。