キュート先生の『肺癌勉強会』

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【KEYNOTE604】未治療進展型小細胞肺癌に対するぺムブロリズマブ/プラセボ+プラチナ+エトポシド比較第3相試験

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『Pembrolizumab or Placebo Plus Etoposide and Platinum as First-Line Therapy for Extensive-Stage Small-Cell Lung Cancer: Randomized, Double-Blind, Phase III KEYNOTE-604 Study』(Journal of Clinical Oncology 2020 より)

まとめ

  • 未治療進展型小細胞肺癌に対するプラチナ+エトポシドとぺムブロリズマブの追加の効果を見た比較第3相試験
  • 症例はぺムブロリズマブ+プラチナ+エトポシド群 228例、プラセボ+プラチナ+エトポシド群 225例
  • 主要評価項目はITT群での無増悪生存期間PFSと全生存期間OS。
  • ぺムブロリズマブ追加群は無増悪生存期間PFSを有意に改善(HR 0.75、4.5カ月 vs 4.3カ月)
  • 全生存期間OSは有意な条件を満たさなかった。
  • 24カ月時点での全生存率は22.5% vs 11.2%。
  • グレード3/4の有害事象は76.7% vs 74.9%。

要約

○ぺムブロリズマブ単剤治療は小細胞肺癌に対して抗腫瘍効果が示されている。

○無作為化、2重盲検、第3相試験の『KEYNOTE604試験』

○未治療進展型小細胞肺癌に対するぺムブロリズマブ+プラチナ+エトポシドとプラセボ+プラチナ+エトポシドを比較した第3相試験

○症例は1:1にぺムブロリズマブ+プラチナ+エトポシド群 228例、プラチナ+エトポシド群 225例に振り分けられた。

○プラチナ+エトポシドは4サイクルまで、ぺムブロリズマブとプラセボは35サイクル

まで投与

主要評価項目はITT群での無増悪生存期間PFSと全生存期間OS。

ぺムブロリズマブ追加群は無増悪生存期間PFSを有意に改善(HR 0.75、95%CI:4.5カ月 vs 4.3カ月、p=0.0023)。

12カ月時点での無増悪生存率:13.6% vs 3.1%

○全生存期間OSは有意な条件を満たさなかった(HR 0.80、95%CI:0.64-0.98、p=0.0164)。[※事前に決定された効果境界はOSでは片側p=0.0128と設定]

○24カ月時点での全生存率:22.5% vs 11.2%。

○奏効率ORR:70.6% vs 61.8%

○グレード3/4の有害事象は76.7% vs 74.9%。治療中止は14.8% vs 6.3%。

キュート先生の視点

現在行われている『ASCO2020』での発表から『KEYNOTE604試験』について取り上げた。PFSは指定された水準を満たしたが、OSは満たすことができなかった。今回、FIGUREをお示しすることができないが、各自見て頂くと分かるのだが、PFSもOSも一貫してプラセボ群とクロスすることはない。小細胞肺癌の治療に当たっていれば感じることではあるが、初回化学療法は奏功する。今回の『KEYNOTE604試験』においても奏効率は70.6%と61.8%である。ただ、PFSもOSもカプランマイヤー曲線を見ると約半年くらいから2群がきれいに分かれてきており、OSでもその差が縮まることはない。

PFS、OSのフォレストプロットを見ても、年齢、性別、地域、肝転移やプラチナの種類などでは全て点推定値はぺムブロリズマブ追加群に寄っていることが分かる。

一つ気になるのは脳転移のある症例は54例と数は限られているが、点推定値がプラセボ群に傾いている。実臨床では脳転移がある場合には放射線治療の選択肢があるので、この試験結果で何か変わるわけではないが、ぺムブロリズマブの追加効果は小細胞肺癌の脳転移に対しては効果が薄いのだろうと推測する。

小細胞肺癌の化学療法と言えば、ほぼ前例に喫煙歴があり、間質性肺炎の併存や薬剤性間質性肺炎の頻度の高い抗癌剤の選択肢を必ず考える。本研究ではTABLEには肺臓炎pneumonitisの文字はなく、頻度が低いため本文中に小さく記載されているのみであるが、4.0% vs 2.2%であった。頻度が高いととるかそんなものか、と捉えるかはそれぞれにお任せするところであるが、ひとたび肺臓炎を発症してしまった小細胞肺癌症例に関してはその後の治療選択肢がかなり限られてしまう懸念はいつも頭の片隅に置いといて頂きたい。

今後、進展型小細胞肺癌の1次治療では、このぺムブロリズマブの『KEYNOTE604試験』、抗PD-L1抗体であるアテゾリズマブの『IMpower133試験』、同じくデュルバルマブの『CASPIAN試験』の使い分けが気になるところではあるが、結局のところ、どれでもそう大して変わらないだろう…と小さな声でここで言ってみる。