キュート先生の『肺癌勉強会』

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【Oncology Tribune 連載31回目】ALK陽性非小細胞肺がんに対するブリガチニブ

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『Brigatinib Versus Crizotinib in Advanced ALK Inhibitor-Naive ALK-Positive Non-Small Cell Lung Cancer: Second Interim Analysis of the Phase III ALTA-1L Trial』(J Clin Oncol 2020)より

医療情報サイト『Oncology Tribune』に論文レビューを寄稿しました。

キュート先生の視点

8月11日にJ Clin Oncol誌に掲載されました『ALTA-1L試験』について勉強しました。。ALK融合遺伝子陽性の未治療進行非小細胞肺がんに対して、第三世代ALK阻害薬ブリガチニブと第一世代ALK阻害薬クリゾチニブを比較した第Ⅲ相試験の中間解析結果になります。

 

今年に改訂される予定の『肺癌診療ガイドライン2020年版』では、ALK阻害薬使用後の二次治療として推奨されると思われるブリガチニブですが、今回はALK阻害薬未治療例の試験結果になります。

 

ブリガチニブは、クリゾチニブ耐性NSCLCに対しての第I/II相試験と第Ⅱ相試験において、無増悪生存期間(PFS)が約16カ月であったことが示されています(J Thorac Oncol 2020; 15: 404-415、J Clin Oncol 2018; 36: 2693-2701)。今回はALK阻害薬で未治療のALK陽性非小細胞肺がん症例を275例登録し、ブリガチニブ群とクリゾチニブ群に1:1でランダムに割り付けています。

 

本研究の主要評価項目は無増悪生存期間PFSであり、その中央値は

 -ブリガチニブ群:24.0カ月

 -クリゾチニブ群:11.0カ月

という結果で、ブリガチニブ群で有意に延長していました(HR 0.49、95%CI:0.35-0.68、P<0.001)

 

現在、ALK変異陽性非小細胞肺がんの一次治療としては広く第二世代ALK阻害薬アレクチニブ(アレセンサ®)が使用されていますが、今後、ブリガチニブのような新しいALK阻害薬が承認され、患者さんごとにより治療効果やQOLの高い治療薬が選択されることが想定されます。ALK変異はEGFR変異に比べ頻度は低いですが、1例ずつ治療経験を重ねて十分に検討していきたいと考えています。

 

詳細は『Oncology Tribune』に図表と共に掲載されています。