『The Effect of Advances in Lung-Cancer Treatment on Population Mortality』(NEJM 2020;383:640)より
まとめ
- 非小細胞肺がんの死亡率は肺がんの生存率が大きく改善したことに関連
要約
〇肺がんには非小細胞肺がんや小細胞肺がんなどの組織型がある。
〇アメリカにおける肺がん全体の死亡率は低下傾向にあるが、組織型別の死亡率の変化や傾向については分かっていない。
〇「SEER」サーベイランス、疫学、転帰の地域で得られたデータから肺がんの死亡率を評価し、新規発症例と検討した。
〇非小細胞肺がんの死亡率は肺がんの発生率よりも早くに低下した。
〇その生存率の改善は経時的であり、分子標的薬の登場の時期と一致した。
〇男性において、
2013-16年での非小細胞肺がんの死亡率は6.3%年間に低下
2008-16年での非小細胞肺がんの死亡率は3.1%年間に低下
にとどまった。
〇肺がんの生存率は2001年に診断された男性においては26%だったのに対して、2014年に診断された男性では35%に改善した。
〇非小細胞肺がんの女性でも同様であった。
〇小細胞肺がんは発生率の低下に伴って死亡率も低下しているが、生存率の改善は認められなかった。
キュート先生の視点
肺がんの死亡率の改善について検討された先日のNEJMです。肺癌診療に従事されている医療者にとっては言わずもがなですが、非小細胞肺がんの患者さんにとっても朗報といえるでしょう。
自分が研修医の頃はたしかEGFR遺伝子変異を検査するのは研究レベル、でしたし、ましてやEGFRのサブタイプなんてことは全く知りませんでした。イレッサは使えましたが、どのような症例に効果が高いのか、ということも分かっていなかった時代。。。
今や多くのドライバー変異を検索することができますし、免疫治療も一般的に使用できますし、放射線照射の技術も進歩しています。肺癌診療の世界でも時代の変化を日々感じています。
今回の研究では小細胞肺がんに関しては「生存率の改善は認められなかった」のですが、①免疫治療の併用療法が承認された、②制吐剤やG-CSF製剤などの補助療法の進歩によって生存率の延長とQOLの維持に今後期待しています。