『Pembrolizumab with or without radiotherapy for metastatic non-small-cell lung cancer: a pooled analysis of two randomised trials』(Lancet Respir Med 2020, published on Oct.20)より
まとめ
- ぺムブロリズマブと放射線治療の併用でPFS/OSいずれも延長する
要約
〇放射線治療は免疫治療に対する全身の抗腫瘍効果を増強させる可能性がある。
〇2つの臨床試験である『PEMBRO-RT試験』(第2相)と『MDACC試験』(第1/2相)は転移性非小細胞肺がん症例に対して放射線治療の有無に関わらずぺムブロリズマブによる治療がランダムに行われた。
〇試験を個別に解析し、免疫治療と放射線治療の併用が潜在的にメリットがあると考えられたが、サンプルサイズが少ないため統計学的に有意とならなかった。
〇転移性非小細胞肺がんに対して免疫治療に対する反応が放射線治療で改善するかどうかを見るためプール解析を行った。
〇2つの試験では放射線照射外の反応を観察するために、少なくとも1つの非照射病変を有する症例が登録された。
〇『PEMBRO-RT試験』では化学療法既治療例が、『MDACC試験』では既治療例も未治療例も登録されたが、いずれの試験も免疫治療は受けていない症例とされた。
〇『PEMBRO-RT試験』では症例はランダムに1:1に振り分けられ、喫煙状況で層別化された。
〇『MDACC試験』では症例は放射線治療スケジュールに基づき2つのコホートのうち1つにランダムに振り分けられた。
〇いずれの試験でも試験の性質上、放射線照射を盲検化できなかった。
〇ぺムブロリズマブはいずれの試験でも放射線治療に関わらず3週間毎200mg投与された。
〇プール解析の評価項目としては
-最高照射範囲外(アブスコパル)奏効率(ARR)
-最高照射範囲外病勢コントロール率(ACR)
-12週でのARR
-12週でのACR
-無増悪生存期間PFS
-全生存期間OS
とされた。
〇プール解析では全148例が解析され、76例がぺムブロリズマブ、72例がぺムブロリズマブ+放射線治療を受けた。
〇全症例のフォローアップ期間の中央値は33カ月。
〇148例中124例(84%)は非扁平上皮がん、111例(75%)は化学療法既治療であった。
〇PD-L1発現率や腫瘍量など、ベースラインでの患者背景に差は認めなかった。
〇頻度の高い照射部位は
-肺転移 28例(39%)
-胸腔内リンパ節 15例(21%)
-肺原発巣 12例(17%)
であった。
〇最高照射範囲外奏効率(ARR)は
-ぺムブロリズマブ単剤群 19.7%
-ぺムブロリズマブ+放射線治療群 41.7%
でOR 2.96(95%CI:1.42-6.20、p=0.0039)。
〇最高照射範囲外病勢コントロール率(ACR)は
-ぺムブロリズマブ単剤群 43.4%
-ぺムブロリズマブ+放射線治療群 65.3%
でOR 2.51(95%CI:1.28-4.91、p=0.0071)。
〇無増悪生存期間PFSは
-ぺムブロリズマブ単剤群 4.4カ月
-ぺムブロリズマブ+放射線治療群 9.0カ月
でHR 0.67(95%CI:0.45-0.99、p=0.045)。
〇全生存期間OSは
-ぺムブロリズマブ単剤群 8.7カ月
-ぺムブロリズマブ+放射線治療群 19.2カ月
でHR 0.67(95%CI:0.54-0.84、p=0.0004)。
〇新規に報告された安全性の事象はなかった。
キュート先生の視点
この論文は実臨床でも大事な論文。
放射線照射を行うことで免疫が惹起され、放射線照射を行っていない病変にも腫瘍縮小効果を認める「アブスコパル効果」が以前から臨床的に言われておりました。
今回は放射線照射とぺムブロリズマブの併用で無増悪生存期間も全生存も大きく改善することが臨床試験でも示された形です。
今後、放射線治療の重要性がますます増してくるものと考えられます。
そして免疫治療を行いながらも、局所で制御できない病変に対しては放射線照射を検討する思考が大事です。
進行/転移性肺がんでも化学療法、免疫治療だけでなく、放射線照射という武器を手に入れることになった大変重要な論文と考えます。