キュート先生の『肺癌勉強会』

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やはり!抗がん剤の治療強度を落としすぎると生存期間も短縮

肺癌, 肺癌勉強会, 用量調整

『Dose intensity correlate with survival in elderly patients treated with chemotherapy for advanced non-small cell lung cancer』(Lung Cancer 2009;66:94)より

まとめ

  • 高齢者肺癌で抗がん剤の治療強度(RDI)が80%未満に減ると生存期間も短縮

要約

〇70歳以上のステージIIIB/IV期の未治療非小細胞肺がん107例を集めた研究

〇初回治療の抗がん剤で決められたスケジュールと用量の80%以上の治療強度で投与した群と80%未満で投与した群で比較検討した。

〇年齢の平均は74.3歳、92.5%がPS0/1、併存症の数の平均は1.86個。

〇最も選択された化学療法のレジメンはビノレルビン単剤あるいはゲムシタビン単剤だった。(2009年に報告された研究です・・・)

〇全例の平均治療強度は68%、36%の症例が治療強度80%以上であった。

奏効率は80%以上群と80%未満群で55.2% vs 33.3%であった。

2群間で有意に生存期間の短縮が認められた

〇ベースラインのヘモグロビン値とBMIが有意に治療強度に影響を与えていた。

キュート先生の視点

RDI(relative dose intensity)は日本語訳は見つかりませんが、相対用量強度とか訳すのでしょうか。ここでは単に「治療強度」と表しましたが、通常の決められたレジメンの用量と期間に対して、実際にどのくらいの用量・期間で投与されたかを表す指標です。

乳がんの研究でも

 -治療強度を落とすと3年生存率が落ちる(NEJM 1994)

とか、乳がんの術後化学療法で

 -治療強度を65%を下回ると生存がプラセボと同等(NEJM1995)

という報告があります。

今回紹介した論文は2009年の報告で現在の化学療法のストラテジーとは全く異なりますが、最近も新型コロナ感染症拡大下で骨髄抑制を回避するために踏み込んだ用量設定をするには勇気がいります。

裏を返せば用量を必要以上に下げてしまう、投与期間を必要以上に空けてしまう等が考えられますが、やはり可能であれば治療強度は保つことが生存に繋がることを改めて認識しました。

もちろん症例を見て無理に治療強度を上げる必要はありませんが、よく検討して下さいよ、あまりに減量する・治療期間をあけるような場合にはBSCも選択肢ですよ、ということです。