キュート先生の『肺癌勉強会』

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【RELAY】未治療EGFR陽性非小細胞肺癌に対するエルロチニブ+ラムシルマブ

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『Ramucirumab plus erlotinib in patients with untreated, EGFR-mutated, advanced non-small-cell lung cancer (RELAY): a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial』(Lancet Oncol 2019;20:1655)より

まとめ

  • EGFR陽性非小細胞肺がんに対するエルロチニブ+ラムシルマブの効果を見た第3相試験
  • 449例をエルロチニブ+ラムシルマブ群 224例、エルロチニブ+プラセボ群 225例に振り分けた
  • 主要評価項目は無増悪生存期間PFSで19.4カ月 vs 12.4カ月(HR 0.59、p<0.0001)
  • グレード3/4の治療関連有害事象は72% vs 54%

要約

〇EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんに対するEGFRチロシンキナーゼ阻害薬+血管新生阻害薬は臨床データはあまり広く認知されていない。 

〇本研究はEGFR陽性非小細胞肺がんに対するEGFR-TKIとしてエルロチニブとVEGFR2アンタゴニストであるラムシルマブの併用効果を見た第3相試験。

〇2重盲検、第3相試験で世界13か国、100の医療機関で行われた。

〇18歳以上、ステージIVのEGFR遺伝子変異(19deletionあるいはL858R変異)のある非小細胞肺がんでECOG-PS 0-1で中枢神経系の転移のない症例を登録した。

〇449例をエルロチニブ+ラムシルマブ群 224例、エルロチニブ+プラセボ群 225例に振り分けた。

〇エルロチニブ150mg/日で連日内服し、ラムシルマブ10mg/kgあるいはプラセボを2週間毎に投与した。

〇主要評価項目はITT集団で調査者評価の無増悪生存期間PFSとした。

〇フォローアップ期間の中央値は20.7カ月。

PFSの中央値:19.4カ月 vs 12.4カ月(HR 0.59、95%CI:0.46-0.76、p<0.0001)

〇グレード3/4の治療関連有害事象は72% vs 54%

〇エルロチニブ+ラムシルマブ群で高血圧24%、ざ瘡様皮疹15%が認められ、エルロチニブ+プラセボ群でざ瘡様皮疹が9%、ALT上昇8%であった。

キュート先生の視点

本研究『RELAY試験』のグローバル治験主導責任医師である近畿大学の中川和彦先生は「この研究結果はこれまで得られていたVEGFRおよびEGFR療法の経路を標的とすることの有用性を立証するもの。エルロチニブ+ラムシルマブ併用療法がEGFR遺伝子変異を有する進行非小細胞肺がん症例の大事な治療選択肢になることを示唆する」と発言されている。確かにEGFR陽性非小細胞肺がんでは現在オシメルチニブが1次治療に使用されているが、1年くらい経過したころの耐性化が問題になっている。RELAY試験のPFS 19.4カ月は十分にエルロチニブの効果をラムシルマブが大きく引き延ばした、と考えられる。また12カ月時点でのPFS率も71.9% vs 50.7%と併用群が大きく上をいっており、効果としても十分期待できそうな印象である。

また昨年の肺癌学会2019で、211例の日本人サブセットの発表も拝聴したが、全集団と一貫した効果/安全性が示され本邦でも期待できるレジメンの一つと考えられる。

病勢増悪した症例の耐性メカニズムとして「T790M耐性遺伝子変異」の獲得が問題となるが、この試験では両群共に同様の割合で存在しており、2次治療以降のオシメルチニブに続けられると推測する。

オシメルチニブに移行できなかったとしても、プラチナ、ペメトレキセド、ベバシズマブ、ドセタキセルなどの重要なキードラッグが残されていることも重要。もちろんオシメルチニブが後治療に残されていることも鍵と考える。

難点を挙げるとすればラムシルマブは2週に1回点滴、ベバシズマブは3週に1回の点滴で来院する必要があるとのことである。1週の差ではあるが、このコロナ禍においては患者さんと十分に話し合い、理解を得る必要がある。

本研究の論文化の時点では全生存OSに関するデータはimmatureであり、掲載されていないので、結果が待たれるところである。

EGFR陽性非小細胞肺がんの1次治療としてはオシメルチニブ単剤が重要な治療選択肢ではあるが、今後は先日のJAMA Oncology誌に掲載されたオシメルチニブ+ベバシズマブ療法、『NEJ026試験』のエルロチニブ+ベバシズマブ療法、とこの『RELAY試験』の結果でEGFR-TKIと血管新生阻害薬の併用のメリットのある胸膜病変がある、脳転移/脳浮腫のある、肝転移があるなどの症例に対して検討していくこととなるのであろう。